(左から)NTTアーバンソリューションズ デジタルイノベーション推進部長 執行役員 上野晋一郎氏、NTTドコモ エンターテイメントプラットフォーム部ビジネス推進担当 課長 栗山浩二氏、同部 部長 勝亦健氏
デジタル技術を活用して都市が抱える課題の解決を目指す「スマートシティ」。米調査会社のReport Oceanによると、グローバルのスマートシティ市場における2020年から2030年のCAGR(年間平均成長率)は27.7%の見通しだ。2030年の市場規模は、1兆4000億米ドル(約210兆円)に到達すると予測されている。
このスマートシティにかねてより力を入れてきたのが、NTTグループだ。
NTTアーバンソリューションズ(以下、NTT US)は、次世代ネットワーク構想「IOWN」をベースとする「街づくりDTC(Digital Twin Computing)」を活用したスマートシティに取り組んでいる。街に敷設されたセンサーや個人端末から取得した街や人などのデータをもとに、仮想空間上で予測分析を行う。この結果を現実世界にフィードバックすることで、再度データが蓄積される。街づくりDTCは、まさに“循環型”のデジタル基盤だ。
同社は2022年10月、NTT都市開発が建設した商業施設「アーバンネット名古屋ネクスタビル」にて街づくりDTCを活用した実証実験を実施。来店者数予測に基づいたフードロス削減やロボットによるフードデリバリー、空調設備の最適化などに取り組んできた。
XRで体験と回遊を生み出す
NTT USは現在、“ビル単体”から“街区”のスマート化に活動範囲を拡大させている。NTTグループのオフィスが立ち並ぶ品川港南エリアでの様々な取り組みに着手している。
具体的には、同エリアの駅前、イベント広場など全6カ所にXRコンテンツを配置。専用アプリをインストールしたスマートフォンやタブレットなどでXRコンテンツを視聴可能なイベントを昨年末に実施した。
「コンテンツを配信して終わりではない。配信することによって人の動きがどう変わるのかなど、総合的な実証実験を行っている」とNTT US デジタルイノベーション推進部長 執行役員の上野晋一郎氏は説明する。
同社は、メーカーが異なるロボットを複数台稼働させる実証も実施している。運行経路最適化や無線通信環境予測など、最先端技術の検証を行っているという。エレベーターの利用状況などのビル設備に関するデータを収集・分析し、最短かつ最小限の稼働で配送できる体制の実現を目指している。
2025年に開催予定の大阪・関西万博会場には「パーソナルエージェント」を提供する。例えば、来場者の行動履歴や混雑状況、天候などの情報をかけ合わせて分析。来場者1人ひとりの嗜好に即した施設や体験をレコメンドするという。NTT版LLM(大規模言語モデル)「tsuzumi」の活用も視野に入れているのこと。
「デジタルが主役の世界を作りたいわけではない。デジタルがナチュラルに人を支え、“ひと中心”の世界を目指していく」と上野氏は展望する。