NTTは2024年5月15日、IOWNのオール・フォトニクス・ネットワーク(APN)と無線システムを利用状況に応じてリアルタイムに連携制御する実証実験に成功したと発表した。
工場内無線環境を想定したWi-FiアクセスポイントとIOWN APN回線を接続し、Wi-Fiアクセスポイント配下の無線端末とクラウドサーバ間で通信する環境を構築し、無線利用状況を把握する「Cradio」機能を実装した無線コントローラと、IOWN APN回線のリアルタイム切り替えを行う光コントローラを、拡張連携インターフェース(Extended Cooperative Transport Interface/eCTI)を介して連携させることで、以下の2つの実証実験を行った。
①ユーザ指示に基づく、用途に応じた無線+光連携実証
工場において、各プロセスのビッグデータ収集作業から遠隔ロボット操作作業への切り替えを想定し、それぞれの作業における性能要件に合わせ、使用するWi-Fiアクセスポイントと接続先クラウドサーバへの光パスを同時に切り替える実験を行い、連携動作が完了することを実証した。
②無線利用状況に基づく、接続ユーザ端末数に応じた無線+光連携実証
工場において、接続されるユーザ端末数を検知し、その情報に基づき自動で接続先クラウドサーバへの光パスを切り替える実験を行い、100ms程度で連携動作が完了することを実証した。
光無線連携制御概要
技術のポイントは3つ。
①無線区間の電波変動把握技術、および外部システムとの協調制御(Cradio)
端末近辺の無線フレームを常時収集する収集BOXにて、精緻な無線環境情報を取得することで、無線区間の電波変動を把握する技術。これにより特定のAP(アクセスポイント)に帰属する接続端末数の変化を観測し、その変動をきっかけとして、協調制御機能部へ通知。協調制御機能部は、外部システムである低遅延FDN(Function Dedicated Network)の制御機能部に対し、連携制御を実現した。
②光無線連携制御技術
Cradioと低遅延FDNの制御機能部間で、eCTIを介して無線区間の電波状況や接続端末数、用途変更などの情報をやりとりし、無線+光区間のリアルタイム制御を実現した。
③NWコンピュート連携技術
光ネットワークの伝送時間とエッジサーバ上のアプリケーションの処理時間をトータルで監視し、サービスが持続可能なようネットワーク経路および使用するエッジサーバをリアルタイムに同時に切り替える技術。同実証では、光ネットワークとしてIOWN APNを適用し、光スイッチの高速切り替えを実現した。
光無線連携制御動作シーケンス
これらの技術は、Wi-Fiやローカル5Gなどの自営系無線に加え、Beyond5G/6Gなどのセルラ系システムにも応用可能。今後は、様々な無線システムとIOWN APNの連携動作、各種利用シーンを想定した実証実験を進め、IOWN APNと自営系無線を組み合わせたトータルネットワークソリューションビジネスの展開を目指すという。
また、2024年度中を目途に、IOWN Global Forumにおいて検討中の、制御側装置(DU)の省電力化を図る技術「エラスティック・ロードバランシング機能」に適用し、無線基地局とIOWN APNを連携することで、モバイルシステムの省電力化に向けた実証実験を進めるとしている。