NECとNTTは2024年3月21日、海底ケーブルやIOWNでの活用を想定した「12コア光ファイバー」技術を開発し、同技術を用いて“大洋横断級”7280kmの伝送実証に成功したと発表した。
米調査会社のTeleGeographyによると、グローバルでのインターネット通信量は増加の一途を辿っており、2018~2022年の年間平均成長率(CAGR)は約30%となる。また、海底ケーブル1本あたりの容量は、ここ20年で100倍にまで増えたという。
通信の大容量化には、バンド幅(信号を乗せる光・電波の幅)の拡大や、信号を劣化させず届けるための光信号対雑音比の向上などが不可欠だが、「伝送経路数を増やすことでも光通信の大容量化を実現できる」とNEC アドバンストネットワーク研究所 ディレクターのル・タヤンディエ・ドゥ・ガボリ エマニュエル氏は解説した。
NEC アドバンストネットワーク研究所 ディレクター ル・タヤンディエ・ドゥ・ガボリ エマニュエル氏
そこでNECは、海底ケーブルの構造を変えずに光伝送路(コア)を増やす「マルチコアファイバー伝送」に力を注いできた。同社は現在、1本の光ファイバーに2本のコアを設けたマルチコアファイバーを用いた長距離光海底ケーブルシステムの敷設プロジェクトを手掛けている。1コアのシングルコアファイバーと比べ、単純計算で2倍の伝送容量が実現可能になる。
NECは、この2コアをはるかに上回る、“12コア”を搭載したマルチコアファイバーの研究開発にも取り組んでいる。これが商用化されれば、伝送容量が12倍になる。
シングルコアファイバーと12コア結合型マルチコアファイバーの断面
しかし、マルチコアファイバーには課題もある。光ファイバーにコアを増やすことで、隣接するコアの光信号同士が干渉し、通信品質が劣化する「クロストーク」が発生してしまうのだ。
NECとNTTは、この課題を解決するための2つの新技術を開発した。「長距離伝送対応高速MIMO信号技術」と「12コア結合型マルチコアファイバー設計技術」だ。