<特集>日本の通信インフラの論点人口減少時代のユニバ 30年後の「広くあまねく」はどうあるべきか?

通信の利用状況の変化やNTT法の見直しにより、大きな転換点を迎えているユニバーサルサービス。総務省でも今後の在り方について検討が行われている。人口減少時代を見据え、制度を根本から見直す好機だ。

総務省のワーキンググループで、ユニバーサルサービス制度の在り方に関する検討が進んでいる。今夏までに、情報通信審議会 電気通信事業政策部会 通信政策特別委員会へ報告する予定だ。

ユニバーサルサービスは従来、①不可欠性、②低廉性、③利用可能性が基本的3要件とされてきた。

これらの要件を満たした基礎的電気通信役務として、電話のユニバーサルサービス制度が2006年より施行されている。

同制度は当初、メタル固定電話、公衆電話、緊急通報を対象としていた。しかし、携帯電話の普及に伴い、メタル固定電話の契約数は減少が続き、さらにメタル回線設備の老朽化も進んでいるため、途中からメタル固定電話相当の光IP電話やワイヤレス固定電話も対象に加わった(図表1、2)。また、IP化の進展を受けて、2022年の電気通信事業法改正で新たにブロードバンドのユニバーサルサービス制度が創設された。

図表1 固定電話の契約数の推移

図表1 固定電話の契約数の推移

図表2 電話のユニバーサルサービスの対象

図表2 電話のユニバーサルサービスの対象

モバイル中心のユニバを目指すNTT

電話のユニバーサルサービスについては、NTT法でNTT持株と東日本・西日本に、全国あまねく提供する責務を課している。また、電気通信事業法で不採算地域の維持費用の一部を支援する交付金制度が設けられており、2006年度以降、NTT東西に交付金が給付されてきた。

昨年夏からのNTT法見直しに関する議論の中でNTTは、モバイルを軸として、固定地点(屋内)だけでなく居住エリア(屋外)でも利用を保障するユニバーサルサービスに変更すべきと主張している。

背景には、固定電話に代わって携帯電話が主要なコミュニケーション手段になっていることがある。NTTの調査では、日常会話で最も多く使う手段として携帯電話での通話やメール、LINEが82.2%を占める一方、固定電話での通話は6.1%に留まる。60~70代のシニア層の別居家族との連絡手段も、LINEでのメッセージや携帯電話での通話が大半を占める。

NTT東西にとってユニバーサルサービスの提供義務が過大な負担となっていることも見逃せない。

NTT東西には毎年、交付金制度に基づいて約70億円が補てんされているが、ユニバーサルサービスの収支は500億円を超える大幅な赤字を計上している。

島田社長によると、メタル固定電話の廃止・撤去は年間約160万件にのぼる一方、約10万件の新規申込がある。「依頼があれば、全国どこでも1週間以内にメタル固定電話を設置しなければならない。設備の維持にも膨大なコストがかかる」

メタル回線設備の老朽化で今後さらにコスト効率は悪化し、10年後のユニバーサルサービスの収支は900億円以上の赤字になるとNTTは試算する。「それだけのキャッシュを、インフラの高度化に早期に振り分けていくことが重要」「国民経済的に考えて、安く効率の良いユニバーサルサービスを作っていくべき」(島田社長)というのがNTTの考えだ。

ユニバーサルサービスWGで主査を務める、早稲田大学 大学院アジア太平洋研究科 教授の三友仁志氏も「ユニバーサルサービスの義務があるからといって、メタル固定電話を未来永劫提供し続けるならば、新しい技術の普及を阻害してしまうおそれもある。そうならないように制度を作り変える必要がある」と話す。

早稲田大学 大学院アジア太平洋研究科 教授 三友仁志氏

早稲田大学 大学院アジア太平洋研究科 教授 三友仁志氏

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