<連載>IoT最新事情(第1回)生成AIはIoTを変えるか ChatGPTとリアル世界が出会う

ChatGPTを使ってIoTデータを分析しようとする取り組みが始まった。それは、実世界を写すIoTデータと生成AIの出会いを意味する。ChatGPT登場時を超えるインパクトを我々の生活にもたらす可能性がある。

次のチャレンジは「解釈」

MODEはこうした操作インターフェースとしての生成AI活用を深掘りしていく考えだ。プロダクトマネージャーの渡邊飛雄馬氏は今後の方針について、「こういうレポートを作って、こういうことが起こったら教えてといった操作インターフェースとしての開発を重点的に進めていく」と話す。「生成AIにBizStackのシステムの操作方法を教える」ことで、先月と今月のデータを比較するグラフを作る、アラート通知の閾値を設定するなど、これまで手作業で行っていた操作もチャット上で自然言語による命令で実現できるようにする。

実現すれば、IoTは今よりぐっと身近なものになるはずだ。「日本語で操作できることは、技術に明るくない人にとって素晴らしく使いやすいUIになる」と上田氏。しかも、スマホとチャットを使うので音声入力との相性も抜群だ。異変を知らせるアラートの設定も、従来は設定画面を開いて数値を入力していたが、チャットボットを介するなら「室温が32度を超えたら教えて」と頼むだけでいい。

また、操作UIとしての活用だけでなく、「データの解釈もできるようにしたい」と上田氏は展望する。温度変化の推移を示すグラフとともに、異変が行った背景・要因も教えてくれれば現場での情報共有はますます進む。ただし、「これは数字を扱うのを苦手とする生成AIだけでは難しい。生成AIが苦手な部分は旧来のAIモデルで学習させて分析する。それを組み合わせてユーザー体験として作り上げられれば超イノベーションが起こる。そこに向かっていきたい」と渡邊氏は話す。

MODE Co-founder兼CEOの上田学氏(左)と、プロダクトマネージャーの渡邊飛雄馬氏

MODE Co-founder兼CEOの上田学氏(左)と、プロダクトマネージャーの渡邊飛雄馬氏

チャットボットで情報を引き出せるBizStack AIの使用例

BizStack AIで追加情報を取得している様子。自然言語で次々と情報を深掘りしていけるため、現場での情報共有に役立つ

ChatGPTが地球上のことを伝える

IoTと生成AIはまだ出会ったばかりであり、SORACOM Harvest Data IntelligenceもBizStack AIも開発が本格化するのはこれからだ。当然、さらに多くのプレイヤーの参戦も予想され、競争の過程で次々と新たな使い道が見えてくるだろう。その可能性はまさに未知数であり、ソラコムの松下氏によれば、これまでの研究開発でも次々と新たな発見があったという。例えば、生成AIが時系列データの中に欠損値を発見し、その部分を埋めるデータを推測するという使い方だ。

IoTデータの収集においては、センサーやネットワークの不調によって一部のデータが欠損するケースは珍しくない。この欠損値の特定と補完はIoTで苦戦しやすい課題の1つだが、生成AIはこれを克服するソリューションになり得る。「現在のLLMは優秀。データが抜けているところを教えてくれて、さらに、そこを埋めるのに妥当なデータまで推測してくれる。これは偶然見つかったものだ」(同氏)

今後、ユーザーのアイデアや業界特有のノウハウが組み合わされば、生成AIとIoT連携の深度は加速度的に増していくだろう。

現在、特定業種・業界のドメイン知識を持つ基盤モデルを開発する動きが広がっている。金融業界では、ブルームバーグが金融情報処理に特化したBloombergGPTを開発。医療分野では、電子カルテや臨床ガイドライン等の医療データに対して特別に訓練された基盤モデルとしてマイクロソフトが「BioGPT」を、エヌビディアが「GatorTron」を開発し、人間に代わって膨大な臨床データから洞察を引き出せるようになることが期待されている。

生成AIは現在でも時系列データから傾向やトレンドを分析することが可能だが、その精度については、適切な基盤モデルの選択とパラメーター調整に依存する。これを解決するのがドメイン知識を使ったトレーニングであり、前述の例と同様、例えば製造機械の稼働データや気象センサーのデータ解析に特化した基盤モデルが登場すれば、IoTデータ解析における生成AIの活用範囲が広がるとともに、その信頼性も飛躍的に高まるだろう。MODEの上田氏は「多分そうなる。一番乗りで作りたい」と意気込む。

このように、生成AIにとってIoT、つまり実世界を写すリアルデータとの出会いは、飛躍的進化のステップになる。

世界中を騒がせるChatGPTも、今はせいぜいバーチャル空間の情報を学んで答えているに過ぎないが、「実世界のデータがあれば、地球上のことを伝えられるようになる。Wikipediaの情報を読んでいる今より、がぜん面白くなるはずだ」と上田氏。生成AIがIoTと真に結びついたときのインパクトは、ChatGPTの登場時を遥かに超えるものとなろう。

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