クラウド統合環境をパッケージ化
技術面においては、先にも述べた複数DC間をまたがる大規模仮想環境向けソリューションが、クラウドサービスを提供するためのインフラコストの改善にも役立つ。
現在はDC内の仮想化が進んでいるが、「DCをまたがる仮想化」により効率化をさらに進められる。場所の離れたDCのリソースを共有化することで、IT関連コストに比べてはるかに大きな地代や建設費、運用費を改善できるからだ。8月にはマルチサイトのストレージを統合管理できる「ProSphere」も発表し、次々とソリューションを拡充している。
また、EMCとVMware、シスコシステムズの3社の製品を組み合わせたクラウド環境パッケージ「Vblock」も海外のキャリアでの採用が進んでいる。これは、仮想化環境の規模別に事前検証済みのハードウェアとソフトウェアをパッケージ化して提供するもので、導入にかかる工数を大幅に削減できるのが特長の1つだ。
国内でも2010年から提供が始まっており、すでに企業や自治体への導入が進んでいる。今後は国内キャリアへの展開も進めていく。
もう1つ、Vblockの大きな差別化ポイントとなっているのが、ネットワーク設定も含めてクラウド環境を統合管理できる点だ(図表2)。利用するアプリケーションやユーザー数、バックアップやセキュリティといったビジネス上の要件に応じて必要なリソースを自動的にプロビジョニングするなど、運用負荷を軽減するための自動化が可能だ。
図表2 Vblockの管理構造 |
エコシステム構築も支援
Vblockの統合管理ツールは、基盤の最小単位をサービスカタログとして管理し、要件に応じたITリソースを組み合わることで自動プロビジョニングを実現している。このサービスカタログをビジネスやアプリケーションの要件に応じてメニュー化しておくことで、多様なサービスレベルやパフォーマンス要件に対応できるようになる。こうした特長は、クラウドサービスのメニューを充実させることにもつながる。
現在のクラウド利用の実情は、エンドユーザーの個別の要求を聞き、それに応じたクラウド環境を“手作り”で提供しているのが大半だ。クラウドをより浸透させていくためには、ユーザーが自らサービスを選び柔軟に活用するパブリッククラウドを広げていかねばならないが、Vblockは、そうした面でも貢献度の高いソリューションとなりそうだ。
さらに、クラウドサービスのビジネスを推進するための取り組みとして、「パートナーエコシステムの実現もサポートしていく」。
EMCは海外で、技術支援に加えて販売・マーケティング協力も行う「SPプログラム」を展開しているが、EMCジャパンも先ごろ、国内のクラウド事業者をビジネス面で支援する「クラウドビジネス開発部」を立ち上げた。
その取り組みの1つが、「クラウドビジネスサロン」だ。これは、ユーザー企業やSP、アプリケーションベンダー、研究機関などをメンバーとしてクラウドビジネスにおける課題や、その克服に必要なソリューションを検討するもの。ここで、クラウドビジネスに関わる多様なニーズや課題を抽出し、その成果をソリューション提供やビジネス支援などに活かしていく考えだ。