スマートフォン/タブレット型多機能端末(以下「次世代情報端末」と呼ぶ)の普及が急速に進み、近々スマートフォンの出荷台数がPCを上回るとも予想されている。ビジネスのシーンにおいても千台規模の導入事例が出てきている。今後、さらに広く次世代情報端末を用いた業務が行われるようになることは疑うべくもない。次世代情報端末の浸透した新しい時代に、企業はどう対応すべきなのか。
連載の第1回では、成功する次世代情報端末導入のアプローチとして、構想策定・要件定義の進め方を説明した。また、第2回では、営業・販売の領域における次世代情報端末の活用のポイントをCRM(Customer Relationship Management)の観点から分析し提言した。
第3回となる今回は、次世代情報端末を活用するに当たっての「システム」面の技術課題を見極め、新たな端末の特性をビジネスで最大限に活用するためのシステムの要件と、その実現の方向性を提案する。
企業が目指すべき姿とは
本連載の第1回では、多くの企業が導入面・運用面の課題を解決できずに試験導入に留まっていると述べた。しかしそれらを解決しても、いざシステムの実装となった段階になると、さまざまな技術課題に直面する。
その結果として、試験導入を突破した先進的な企業であっても、限定的な機能のみを業務で利用することになったり、またはシンクライアントとしての利用に留まり、次世代情報端末の特性を活かすことができなかったりするケースが多い。
次世代情報端末の特性を活かし、かつ、汎用的な業務端末として利用する。それにより、システムを利用する場所・時間といった制限をなくし、一層の業務効率化・品質向上を実現するとともに、社員の働き方の自由度も増す――。
これが次世代情報端末の活用によるビジネス改革の目指す姿であると考える。
システムはどう変わるのか?
では、次世代情報端末の特性を活かすために「システム」はどうあるべきなのか。
日立コンサルティングと日立製作所は共同で、企業へのヒアリング調査とユースケースをもとにした仮説立案の2つのアプローチから次世代情報端末の活用における課題とニーズを抽出し、システムにどのような要件が求められるのかを洗い出し、整理した。
次世代情報端末での利用を想定した業務システムの構成を示したのが図表1だ。
図表1 次世代情報端末の特性を活かしたシステムの主な構成 |
まず、端末はオンライン/オフライン両方の環境における運用を想定する。グループウェア、ERP(Enterprise Resource Planning)、CRM、SCM(Supply Chain Management)などの業務システムは、既存の資産を可能な限り流用する。また、「端末」からセキュアに「業務システム」にアクセスするための「認証・運用管理基盤」を配置している。
次世代情報端末の特性を活かしたシステムの構成として、特徴的なのが「プッシュ配信サービス」である。これは、業務システムや認証・運用管理基盤から端末に対して、タイムリーに通知を行うための仕組みである。
プッシュ配信サービスはOSごとに、アップルやグーグル、マイクロソフトといったOSベンダー各社から提供されている。また、ユーザーが独自のプッシュ配信の仕組みを構築する方法もある。
次に、OSベンダー各社から提供されるプッシュ配信サービスを除いた、「端末」「認証・運用管理基盤」「業務システム」の3つについて、各々の要件を図表2に示し、実現の方向性を提案する。
図表2 次世代情報端末の特性を活かしたシステムの主な要件 |