伊豆諸島の1つ八丈島。69km2と山手線の内側ほどの面積に、約7000人が暮らしている。
島のほぼ中央にある町立八丈病院は、伊豆諸島および小笠原諸島計11島からなる東京都島しょ地域で唯一の総合病院。同病院で3月末、5Gを活用した遠隔医療支援が始まった。
対象となるのが、循環器の診療だ。心臓超音波(心エコー)検査の動画を、都立広尾病院(東京都渋谷区)に5Gを使って送信すると、専門医がモニターに映し出された映像を確認しながら、町立八丈病院の医師に助言を行う(図表)。
図表 5Gを活用した遠隔医療支援のイメージ
心エコー検査では、超音波を出す小さな機械(プローブ)を胸に当て、心臓の筋肉や弁に当たって跳ね返ってきた超音波を受信し、画像にすることで心臓内部の様子を把握する。5Gの大容量・低遅延といった特徴により、約300km離れた都立広尾病院から、「プローブをこちらに当てて」「もっと左にずらして」といった指示をリアルタイムに出すことができる。
「プローブの動きと指示にタイムラグが生じないので、広尾病院の先生方から『実際にこの場で検査しているようだ』という評価をいただいている」。地方独立行政法人東京都立病院機構 事業推進部 ICT推進センター長の吉満貴史氏は、5G活用の利点をこう説明する。
5Gの低遅延性により、心臓の動きや血液の流れもより把握しやすくなる。
2022年3月に行われた実証実験では、心エコー検査の動画をLTEと5Gでそれぞれ送信したが、「LTEでは双方の発言が重なってしまうなど、診療上必要なコミュニケーションに支障が生じるのに対し、5Gではストレスなくコミュニケーションを取れることが明らかになった」(吉満氏)という。