エンタープライズITのこれからの姿は「100% Web」――。グーグルは2011年7月20日、こんなメッセージを全面に打ち出した企業向けイベント「Google Enterprise Day」を東京・港区で開催した。
「私たちはすべてがブラウザを中心に動いていく100% Webという世界を作っていきたい。すべての情報はインターネットにあり、デスクトップからは取り除かれる」。米Google エンタープライズ グローバルセールス&ビジネスデベロプメント担当副社長のアミット・シング氏はこう語ったが、グーグルのエンタープライズ戦略とは一体どのようなものか。本稿では「コラボレーション」の話題を中心にレポートしていく。
米Google Enterprise グローバルセールス&ビジネスデベロプメント担当副社長 アミット・シング氏 |
「80% Webでも90% Webでもダメ」
まずは100% Webがどんなものなのかを見ていこう。基本的なコンセプトは他社のクラウドモデルと変わらないが、最大の特徴は100% Webという名の通り、すべてをブラウザベースで行おうという点だろう。「クラウドのメリットを十分に活かすには、80% Webでも90% Webでもなく、100% Webである必要がある」(シング副社長)。
クラウドの特徴としては、巨大データセンターのITリソースを共有することによるスケールメリット、多様なインターネット接続デバイスからアクセスできること、大規模な初期投資がいらない従量課金の料金体系、ソフトウェアのアップデートが不要なことなどが挙げられるが、すべてをクラウドに移行することで、これらのメリットは最大化されるというのがグーグルの主張だ。
100% Webの主な特徴 |
この100% Webのコンセプトを象徴するデバイスといえるのが、先ごろ海外では販売が始まったChrome OS搭載のネットブック「Chromebooks」である。グーグルのブラウザであるChrome上でのWebアプリケーションの利用に特化したChromebooksは100% Webに最適化されたデバイスであり、サムスン製のChromebookの起動時間は8秒、バッテリー駆動時間は8時間で、3G内蔵モデルもある。さらにシング副社長は、PCの購入・運用コストが年間5000ドルであるのに対し、Chromebooksは300ドル以下と説明したうえで、「ブラウザだけで済むのであれば、なぜPCが必要なのか」と語った。
サムスン製のChromebooks。エイサーからも発表されている |