NTTグループの不動産事業には、1986年の民営化以来40年近くの歴史がある。全国の局舎等をはじめとする不動産資産を生かして事業を推進するため、2019年7月に設立されたのがNTTアーバンソリューションズ(以下、NTT US)だ。
「当初は『不動産×ICT』と言っていたが、今は『街づくり×デジタル』とお伝えしている」と、NTT USの取り組みを同社執行役員 デジタルイノベーション推進部長の上野晋一郎氏は説明する。
NTTアーバンソリューションズ 執行役員 デジタルイノベーション推進部長 上野晋一郎氏
そのデジタルな街づくりには3本の柱がある。1つは、「ひと中心」であること。もう1つは、「成長し続ける街区」をつくるということだ。誰にどんな価値を提供するのかをデザインし、竣工後も運営を通じ街区の成長をデジタルを活用しながら実現しようとしている。
そして、「その街ならでは」をナチュラルに支えるのがデジタルであるという点が3本目だ。街の文化や歴史を生かし、便利で快適な街づくりを行う。ここでデジタルはあくまで裏方となり、そこで暮らす人がその存在を意識することなく価値を享受できることを目指す。
このナチュラルという観点は、IOWN構想にとっても重要だ。多様性への対応を目指すIOWN構想では、高度な情報処理の効用を人間がストレスなく自然に享受できる心地よい状態を「ナチュラル」と定義している。
上野氏はかつてNTT持株 研究企画部門長の川添常務(当時・現副社長)のもとでIOWN構想の立ち上げに関わり、「これからはナチュラルだ」と議論を重ねたという。街づくりにとって「ナチュラル」なデジタルでの支援は、DTCの考え方とともに大きな力になると確信するに至った。
この3本柱を支えるのが、「街づくりDTC」の取り組みだ。データ駆動型・連鎖型のスマートシティを実現するために、IOWNを活用することが前提となる。街での活動から様々なデータが記録・蓄積される。データは理解され、予測・最適化されたサービスを提供する。そのサービスを利用することにより、またデータが蓄積されるというループが、持続的な価値の提供に結びつく。このループの基礎には、街づくりDTC基盤がある(図表1)。