リーマンショックに端を発する経済危機、それから2011年3月に発生した東日本大震災の影響などにより、国内企業は設備投資や事業の選別など、厳しい経営判断を迫られている。
しかし、これらのコストを軸とした改革だけでは、企業が健全な成長を継続的に行っていくことは難しく、日本経済全体の減速へとつながる懸念がある。経営資源が限られ、経済活動に多くの制約を受ける現在だからこそ、コストと並行して、攻めの姿勢で営業・販売機能の強化を検討することは意義深い取り組みとなる。
日立コンサルティングでは、スマートフォン/タブレット型多機能端末が企業の営業・販売の領域に改革を引き起こす重要なアイテムになると考えている。
本連載では、成功するビジネスにおけるスマートフォン/タブレット型多機能端末(以下、「次世代情報端末」と呼ぶ)の活用方法を提言している。第2回目となる今回は、ビジネスユースが比較的進んでいる営業・販売の領域における活用のポイントをCRM(Customer Relationship Management)の観点から分析し提言する(連載第1回はこちら)。
企業と顧客の関係を変える
物を作れば売れる時代が終焉を迎え、企業は、マーケットの要望をより重視する傾向へと変わってきた。インターネットの普及やコンピュータの高性能化に伴い、企業はe-mailやホームページを使って顧客とのコミュニケーションを図り、CRMシステムを導入して顧客情報を活用するようになった。
今や顧客とのコミュニケーションにおいてシステムは欠かせない存在である。しかし、システムにも、操作する時間・場所、あるいは利用者のITリテラシーによる制限を受けるという欠点があった。近年は、その障壁が取り払われつつある。
企業側は「いつでも」「どこでも」「容易に」次世代情報端末から業務システムにアクセスできるようになった。顧客側も「いつでも」「どこでも」「容易に」こうした端末から欲しい情報を取得できるようになっている。
図表1をご覧いただきたい。こうした端末の普及、そしてクラウドの浸透に伴って、ネットワークの先のシステムに場所や時間の制限を受けずにアクセスできるようになった。これは、企業におけるワークスタイルや、企業と顧客のコミュニケーションスタイルに変革をもたらし、企業と顧客のつながりを強化する可能性を示している。
図表1 スマートフォン/タブレットが変える企業と顧客のコミュニケーションのイメージ |
連載の第1回にて、「ワークスタイルの改革を行う際の検討の軸」(図表2)を紹介し、次世代情報端末の導入を成功させるためのアプローチとして、構想策定や要件定義の重要性を説明した。この枠組みのなかから、営業・販売をテーマに、「戦略(Vision)」、「業務(Operation)」、「組織・人(HR)」がどのように変わるのかを、CRMの観点から分析していく。
図表2 ワークスタイルの改革を行う際の検討の軸 |