KDDIは2011年6月28日、法人向けクラウドの新ブランド「KDDI MULTI CLOUD」を発表した。
通信事業者は現在揃ってクラウドに注力しているが、「BizCITY」を掲げるNTTコミュニケーションズ、「ホワイトクラウド」のソフトバンクテレコムに対し、KDDIにはこれまで法人向けクラウドの統合ブランドといえるものがなかった。KDDIでは今回の新ブランドの立ち上げを機に、法人向けクラウド事業にいっそう力を入れていく方針だ。
KDDI 執行役員 ソリューション事業本部長 東海林崇氏 |
MULTI CLOUDというブランド名は、KDDIの中期事業戦略「3M戦略」に由来する。3Mとはマルチデバイス/マルチネットワーク/マルチユースの3つのMの略。あらゆるデバイスと最適なネットワークにより、さまざまアプリケーションやサービスに対応するシームレスな世界を実現しようというものだ。
3M戦略の全体像 |
MULTI CLOUDは、この3M戦略を法人向けクラウドサービスに適用したものといえる。クラウドはデバイス、ネットワーク、データセンター、アプリケーションの各レイヤで構成されるが、「これらをシームレスに一気通貫で提供しないといけないというのが、我々が行き着いた結論」とKDDI 執行役員 ソリューション事業本部長の東海林崇氏は語った。
MULTI CLOUDが目指すシームレスな世界 |
東海林氏は86.3%の企業が「利用していない」と回答した総務省の調査結果を示したうえで、喧伝されているわりには「意外と利用されていないことがよく分かる」と企業のクラウド利用について指摘したが、その理由の1つは一気通貫のソリューションになっていないためだという。「デバイス、ネットワーク、アプリケーションなど、それぞれのレイヤについて契約や設定、保守運用が必要であり、お客さんは『どうすればいいのか』と悩んでいる。このことがクラウドの阻害要因だった」とした。
総務省調査によるクラウドサービスの普及状況。「意外と利用されていないことがよく分かる」と東海林氏 |
KDDIでは従来から、デバイス、ネットワーク、データセンター、そして仮想デスクトップやテレビ会議、ディザスタリカバリー、「社内では音声クラウド、ボイスクラウドと呼んでいる」というKDDIビジネスコールダイレクトなどのアプリケーションを提供してきたが、この課題を解決するため、今後はこれらをよりシームレスに統合して提供していくという。
これまではレイヤごとにサービスを提供していたが、今後はMULTI CLOUDの新ブランド名の下、各レイヤをシームレスに統合して提供していく |
ちなみにMULTI CLOUDのキャッチフレーズは「ネットワークも、データセンターも、アプリケーションも、デバイスも。その全てを組み合わせられるは、私たちだけでした。」というもの。東海林氏は固定、3G、WiMAX、Wi-Fiを1社で提供できるネットワークをはじめ、すべてのレイヤを統合的に提供できるのがKDDIの強みと繰り返し強調した。アプリケーションレイヤについても、他社との協業を加速させることで今後さらに充実させていくという。
KDDIの法人向けクラウドの新ブランド名は「KDDI MULTI CLOUD」 |