シャープ大畠本部長に聞いたケータイの将来

携帯電話3キャリアに端末を供給し、国内シェア1位のシャープ。市場が飽和するなか、Android端末やLTE端末、さらにはIT製品の通信対応なども視野に入れている。執行役員通信システム事業本部長の大畠昌巳氏に携帯電話事業戦略を聞いた。

――国内の携帯電話市場が冷え込み、端末メーカーが厳しい状況にある中で、シャープはシェア1位と好調を維持しています。冬春モデルは3キャリアから14機種と過去最多の機種数を投入しますが、どのような特徴があるのですか。

大畠 今回のモデルでは、機能とデザインの両面を強化しています。

まず、機能面では特にデジカメを強化しており、3キャリアから1210万画素のCCDカメラを搭載した“AQUOS SHOT”が揃い踏みになりました。単に画素数が高いだけでなく、高速100連写や、あらかじめ登録した人に優先的にピントを合わせる個人検出といった機能も充実しています。

携帯電話とデジカメを別々に持つ方もいますが、携帯1台で十分という方は確実に増えています。そうしたユーザーの間では撮影した画像を加工・整理するアプリケーションに対する需要が高まっており、メーカーの間では画素数よりも、どちらかというとアプリケーションに競争が移っています。当社ではアルバムやフォトビューアー機能などを取り入れ、アプリケーションについてもキャッチアップしています。

一方、デザイン面では、薄型化を進めるとともに、本体表面にイルミネーションを実装するなど高級感を演出しているのが特徴です。

――以前はハイエンドモデルが中心でしたが、今回は14機種のうち8機種がミドルレンジとなっています。

大畠 この数年で状況は様変わりしており、当社の推計では09年度上期に出荷された端末はミドルレンジが55%を占める一方、07年度は50%を占めていたハイエンドが30%に減少しています。

販売奨励金による販売方式の時代は、ハイエンドでも発売から半年も経たないうちに価格が下がり、場合によっては1円やゼロ円で購入できました。しかし新販売方式では、ハイエンドはいつまで経っても価格が高いままです。しかも不況の影響でお客様の財布の紐は固くなっています。「どうしても欲しい」という方は発売直後に購入されますが、1カ月もすると売れ行きが落ちてしまいます。

これに対し、ミドルレンジは発売直後の勢いこそありませんが、コンスタントに売れ続けるので、結果的にはハイエンドより台数が多く出ます。

数年前のミドルレンジは薄さやデザインが特徴でしたが、現在は800万画素カメラや3.4インチ液晶など少し前のハイエンド並みの機能を備えていながら、手頃な価格で手に入れられることが人気につながっています。

――では、今後はミドルレンジが中心になっていくのですか。

大畠 端末メーカーにとって、ハイエンドはフラッグシップモデルとして欠かせません。しかも、ハイエンド向けに開発した機能が、ミドルレンジにシフトするという流れになっています。そのため、両方とも必要だと考えています。

マルチキャリアによるメリットも

――これだけのラインナップを揃えようとすると、開発コストの負担増などのデメリットも出てくるのではありませんか。

大畠 日本は通信キャリア主導による販売方式で、キャリアによって通信規格もデザインも異なります。社内ではすべて共通というわけにいかず、キャリア別の縦割り組織になっているので非効率であることは否定できません。

しかし、売れ行きには波があるし、すべての商品がヒットするわけではないので、3キャリアに端末を供給している方が経営上は有利です。また、カメラ技術や液晶、アプリケーション、ミドルウェアなどは横展開できます。このため、デメリットよりメリットの方が大きいといえます。

たくさんのモデルがあるように見えますが、アクセサリーブランド「Q-pot.」とのコラボレーションで板チョコをイメージした「SH-04B」のように、ベースモデルに特長あるデザインを施したデザイン端末も増えています。

月刊テレコミュニケーション2010年1月号から転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

大畠昌巳 (おおばたけ・まさみ)氏

1955年12月18日生まれ。78年3月広島大学工学部卒業。同年4月シャープ入社。2003年2月通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 事業部長。04年10月通信システム事業本部副本部長兼パーソナル通信第一事業部事業部長。06年4月情報通信事業本部本部長。08年9月海外営業本部 副本部長兼SESC(夏普商貿)情報通信分社総経理。09年4月通信システム事業本部執行役員本部長、現在に至る

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