工場DXが国内でも加速している──。そのうえで欠かせないのがWi-Fiやクラウド、IoTデバイスなどの活用だが、実は工場特有の課題がある。電波干渉が起こりやすく、Wi-Fiが途切れやすいといった問題だ。工場ネットワークに詳しいジュニパーネットワークスの有村淳矢氏は、AIを用いて運用管理する「AIOps」が工場DXの第一歩になると語る。
――日本のスマートファクトリーの現状はどうなっていますか。
有村 私たちジュニパーネットワークスが推進するAIドリブンのWi-Fiソリューションを全面採用する北米の大手自動車工場をはじめ、グローバル、特に北米ではスマートファクトリーの取り組みは非常に進んでいます。
一方、日本の場合、比較的大規模な製造業でも、多くは「まだこれから」という状況です。しかし、そうした方々も「工場DXにトライしなければならない」ということは理解されており、相談をいただく機会が最近増えてきました。日本でも「ようやく始まった」と感じています。
――具体的には、どのようなニーズが拡大しているのですか。
有村 まず多いのは、「工場をクラウドにつなげたい」という要望です。以前は「工場をインターネットにつなぐことは絶対に許されない」といった考えの方も少なくありませんでしたが、だいぶ変化しています。コロナ禍の影響でクラウドを利用する機会が増え、クラウドの利便性や安全性に対する理解が深まったことが背景にあると思います。
もう1つ確実なニーズとしてあるのは、工場内で使う様々な端末への対応です。これまで有線ネットワークが主だった工場においても、今後より多くのタブレットやAGV(無人搬送車)などを活用していくため、無線ネットワークの重要性が増しています。
また、AGVや産業ロボットでは、高精細映像やAIの活用など、周辺機器の高度化が進んでおり、すでに導入しているAGVや産業ロボットを機能強化するためにも高速大容量の無線ネットワークが求められています。
――工場ネットワークも「ワイヤレスファースト」の方向へ向かっているのですね。とはいえ、工場は無線通信にとって難しい環境です。電波を通さない金属だらけですし、産業機械は電波雑音の発生源にもなります。
有村 無線は“生き物”であり、常に電波環境が変化します。特に、金属製のモノが頻繁に移動したりする工場は、その傾向が顕著で、誰かが運んできた部品や蛍光灯でさえも電波干渉を起こし、つながらなくなることがあります。そのため「急にAGVとの通信が止まってしまった」といった無線のトラブルに多くの工場が悩んでいます。
――どうすれば、途切れないWi-Fiを工場で実現できますか。
有村 必要なのは、常に電波状況を見える化して、リアルタイムに電波出力や周波数割当を最適化することです。工場のWi-Fiは、一度構築・設定したら終わりではありません。
――人手での対処は難しそうですね。
有村 その通りです。結構な規模の工場でも、IT管理者は1~2名といったことは珍しくなく、とても人手では対処できません。トラブルシューティングのために専門業者を呼んだが、電波環境はすでに変化しており、「結局、原因はよく分からなかった」という話もよく聞きます。
そこでジュニパーネットワークスが提案しているのが「Juniper Mist」です。AIを用いて運用管理する「AIOps」によって、電波環境をリアルタイムに最適化することで、工場において途切れないWi-Fiを実現します。