京大原田研と日新システムズ、Wi-SUN FANの大規模フィールド実証に成功

京都大学大学院情報学研究科の原田博司教授の研究グループ(以下、京大)と日新システムズは、Wi-SUN FANを用いた無線機の大規模高密度環境における通信試験として、京都大学構内に400台の無線機を設置し、全無線機の自律的なマルチホップネットワーク構築の確認および通信試験を行うことに成功したと2023年3月30日に発表した。

Wi-SUN FANはスマートメーターに用いられる、マルチホップを特徴とするIoT無線通信規格(参考記事:「5Gは分散時代の幕開け。ローカル5Gが日本最後の砦に」京大・原田教授インタビュー)。次世代スマートメーターやスマートシティで利用されるIoT無線ネットワークでは、多数の障害物が存在したり、機器設置後に周辺環境が変化したりする環境でも安定動作することが求められる。

京大と日新システムズは、かねてより高密度大規模ネットワーク構築の研究に取り組み、今年2月にはスマートメーターの実運用を想定した1000台規模の無線機による通信試験に成功していた。しかし、これまでの試験は屋内の試験室内の設置に留まり、フィールド実証が実施できていなかったという。

大規模高密度ネットワーク構築の研究の成果と今回の実証の位置付け

大規模高密度ネットワーク構築の研究の成果と今回の実証の位置付け

今回、京大構内の6万8000平方メートル(170メートル×400メートル)の範囲に400台(屋外292台、屋内108台)の無線機を設置し、全無線機の自律的なマルチホップネットワーク構築の確認と通信試験に成功した。無線機の設置場所は特に事前の設計等を行わず、無線機間が十分な電力で送受信できるよう高密度に設置したという。試験期間は2日間の連続運用。

京都大学構内に設置した無線機の接続状況

京都大学構内に設置した無線機の接続状況

各無線機は複数の建物の影や奥側になる場所にも配置していたが、Wi-SUN FANの自律的マルチホップネットワーク構築機能により、障害となる建物を迂回するようなネットワークが自動的に構築され、範囲内に設置された全ての無線機がネットワークに収容されることを確認できたという。

無線機の設置例

無線機の設置例

無線機の設置例

また、Wi-SUN FANが構築するネットワークは、設置環境に合わせて通信成功率を向上させるように、各無線機が考えネットワーク構成を変化させていることも確認できたという。この機能により、都市部でセンサーネットワークを構築した場合、新しい建物の建築や街路区画の変更などの無線経路に大きな影響があるような変化が起きても、その変化に応じた無線マルチホップネットワークを自動的に構築することが可能になるとしている。

通信成功率は97.1%以上を記録した。これはすべての無線機から30分、15分、5分間隔でのデータ送信を行った結果であり、実施済みの屋内環境での1,000台大規模実証とほぼ同様の成功率になったという。

京大と日新システムズは、今回の成果により、次世代スマートメーターやスマートシティで利用されるIoT無線ネットワークの実用化に目途が立ったとしている。両者は今後もWi-SUN FANの有用性の周知、普及活動や、様々な分野への導入、商用化を行っていくという。

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