パナソニック、フロントホールの伝送効率を向上させる光・無線統合制御技術を開発

パナソニック ホールディングスは2023年3月29日、通信事業者の基地局装置間をつなぐ光フロントホール(以下、光FH)の伝送効率を向上させる、光・無線統合制御技術を東北大学と共同開発したと発表した。

本技術は、誤り訂正の最適化と無線IQ直接マッピングにより、光FHのトラフィックを削減するもの。有効性を検証した実証試験で、パナソニックの基地局装置と、東北大学が開発した光伝送装置の出力データを用いて、従来方式との比較評価を実施。本技術による光FHトラフィックの削減効果を確認した。

5G RAN(無線アクセスネットワーク)は無線周波数を処理するRU(Radio Unit)と、制御部のCU(Centralized Unit)とDU(Distributed Unit)の3つで構成される。CUとDUは仮想化ソフトウェア(vDU/vCU)として通信事業者の局舎やアンテナサイト等に設置された汎用サーバー上で動作させることが可能だ。

vCUとvDUを共に収容局舎で動作させるC-RAN(Centralized-Radio Access Network)構成において、vCU/DUとアンテナサイトのRUとの間の通信は、光FHで光伝送される。C-RAN構成では無線通信の大容量化によって光FHのトラフィックが増大するのに加えて、vCU/DUをアンテナサイト側で動作させるD-RAN(Distributed- Radio Access Network)構成に比べてトラフィック量が増大することで光FHが逼迫する可能性がある。

今回開発した光・無線統合制御技術はC-RANにおけるこの課題を解消するものだ。次の2つの特徴がある。

1つは、従来は光区間および無線区間で発生する誤りに対して個別に適用していた誤り訂正技術を、C-RAN構成においては無線区間のみ適用する。光区間では誤り訂正技術を適用しないため、無線信号には光区間における誤りが残存してしまうが、光伝送を行う前に適用する無線の誤り訂正技術を適切に制御することで、通信品質を補償することが可能になる。

誤り訂正最適化の適用イメージ

誤り訂正最適化の適用イメージ

これにより、光区間の誤り訂正のために付加されるオーバーヘッドを削減し、光FHのトラヒックを削減することができる。

2つ目の特徴は、C-RAN構成においてvDUから伝送される無線のIQ信号(直交座標系を使って無線信号をI(同相)成分とQ(直交)成分で表したもの)を光のIQ信号に直接マッピングして光伝送する点だ。これにより、従来の光伝送で行っていた光伝送のための無線・光フォーマット変換処理を不要にし、フォーマット変換に係るデジタル信号処理を削減する。さらに、光FHのトラフィック削減と、光区間における処理遅延の削減にもつながる。

実証試験における無線スループット特性

実証試験における無線スループット特性

実証実験における評価では、光区間と無線区間の両方の誤り訂正技術を適用する従来方式の無線スループットと比較。無線スループットの劣化はわずか4%に抑えられた。光区間の誤り訂正のために蒸されるオーバーヘッドの削減などにより、理論上は、従来に比べて光FHトラフィックを最大67%削減できる見込みという。

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