大型IPセントレックスを導入した山梨県北杜市――運用5年で実証された管理・通信コスト削減効果

2004年に7町村の合併で誕生した北杜市。運用管理の効率化、情報伝達の向上等を目的として整備されたIPセントレックスシステムは現在、どのような効果を上げているのだろうか。

通信料・運用費ともに削減

センター集中型のシステム運用では、当然、堅牢さが前提となる。

本システムでは、支所と本庁舎間に光多重伝送装置(CWDM)を導入。業務・情報系、戸籍、電話系にすべてレイヤ1の物理チャネルを割り当て、電話系は二重化している。伝送路の遮断時にはCWDMが冗長ルートへの切り替えを行う(図表1)。

図表1 北杜市役所 IPセントレックス電話システム概要(クリックで拡大)
北杜市役所 IPセントレックス電話システム概要

また、APEX7600iに対して“子”の機能を果たす各支所の「UNIVERGE APEX 3600i」にも、仕掛けがある。“親”との間が遮断された場合には、支所単位で自律稼動できる機能を持つ「タイプDM」を採用した。

こうした手厚い障害対策により、これまで数度土砂崩れや車両接触等で光ファイバー網の切断があったが、電話システムは安定稼動している。

現在、北杜市のこのシステムを運用管理する情報政策課のスタッフは3名という。仮に、分散型の電算・電話システムを運用した場合に、どれだけのコストを要したかを試算するのは難しいが、運用管理負荷を軽減するという目的は、しっかりと果たされていると言えるだろう。

一方、通信コストはどうだろうか。

合併前と現在の回線契約の比較を図表2に示した。5年の隔たりがあるため厳密な比較はできないが、基本料金だけで1カ月当たり約30万円の削減と見積もることができる。

本システムの保守を行う旭陽テレコム(韮崎市)によれば、09年7月の1カ月間に本庁舎から出先施設への発信は約3万回。拠点間通信の内線化によるコスト削減効果も大きいと言えるだろう。

また、5年前の導入当初の1カ月間の発信数は8000回であり、5年間で約4倍に頻度が上がっている。各施設間の連絡密度は間違いなく向上しており、これは、住民サービスの向上を表す指標として評価できる。

電話機の移設コストについても、顕著な効果が見られる。

旭陽テレコムがアナログ電話システムの保守を行っているある自治体で毎年4月の部署移動にかかる移設コストは、09年が約20万円、08年は約80万円だったという。この市は、北杜市の約4分の1の規模だ。

北杜市では、島単位に業務・情報系システムも含めて、スイッチ類を上写真のようなボックスに集約。職員がこれを動かしてLANケーブルを接続し直すだけで作業は完了する。

企画部財政課・管財契約担当の丸茂勝久氏によれば、「支所・出先施設を統廃合しながら本庁舎に人員を集めている。それに伴う移設を自前でできるのは大変な効果」という。

月刊テレコミュニケーション2009年10月号から転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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