総務省 九州総合通信局は2023年2月28日、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)および一般社団法人九州テレコム振興センター(KIAI)との共催で、「ICT研究開発支援セミナーfrom九州」を開催した。
同セミナーは、地域のICT研究開発の支援を目的としたものだ。熊本市内の会場とYouTube配信のハイブリッド形式で行われ、約480名が参加。九州地方における施策について、九州総合通信局の野崎雅稔局長が「デジタル田園都市国家構想等を踏まえたICTによる地域DXの取組」と題して講演した。
冒頭、野崎局長は「労働人口・生産人口が減少する中で、現実世界のデータをサイバー空間でAIを使って分析し、その結果に基づき制御するサイバー・フィジカル融合が重要になる」と語った。
産業界ではサイバー・フィジカル融合が重要に
九州においても熟練労働者の高齢化や減少は深刻な課題となっている。このため、コンビナートの設備監視にドローンを活用し、4Kカメラで撮影した計器の映像をAIで解析をして異常があれば作業員が現場に足を運んで確認したり、洋上風力発電の風車をローカル5Gを使って常時モニタリングして早期に故障を検知するといった取り組みが行われているという。
また、鹿児島県鹿屋市で黒毛和牛の牧場を経営する「うしの中山」では、NTT西日本や関西ブロードバンド、富士通などが、AI画像解析による高品質和牛の肥育効率化に向けた実証を行っている。
高品質和牛の肥育効率化にAIを活用
うしの中山では飼料費などの増大により生産基盤が弱体化する一方、牛の体調・状態管理に多くの人手を要するという課題を抱えている。牛は疲れると座り込み、そのまま動けなくなることがあるため、24時間見守る必要があるが、約5000頭の牛に対して、作業員は現状、数十名しかおらず人手不足だ。
そこで半屋外の牛舎内にローカル5G環境を構築し、約1000台の4KカメラとAI解析により、リアルタイムに牛を監視して異常のある牛の早期発見につなげている。異常を検知するとアラートが通知されるので、必要なときだけ牛舎に駆け付ければよくなり、作業員の負担が軽減されたという。
野崎局長は「人手が少なくなる中で、高付加価値な産業を育成する良い事例」と評価するとともに、「病院でも看護師が不足していることから、ネットワークカメラやミリ波レーダーで患者の動きを検知し、異常があれば看護師が駆け付けるといった対策が必要ではないか」と指摘した。