5G RAN仮想化の難所とは? 最強タッグ組んだデル・テクノロジーズとウインドリバーが示す突破口

通信事業者の5G RAN(無線アクセスネットワーク)展開において一大トレンドとなりつつあるのがRANのオープン化と仮想化だ。ベンダーロックインの回避やコスト最適化などのメリットが期待される一方、インフラ構築・運用の複雑化といった障壁も存在する。これを打開するためタッグを組んだのが、ともに通信ネットワーク機器のオープン化と仮想化をリードしてきたデル・テクノロジーズとウインドリバーだ。日本法人のキーマン2人が協業の狙いと、共同開発した「Dell Telecom Infrastructure Blocks for Wind River」について語った。

数万サイトへの仮想RAN展開と運用を自動化

―― Dell Telecom Infrastructure Blocks for Wind Riverを採用することによって、仮想RANの運用は具体的にどう変わるのですか。

中田 デル・テクノロジーズのインフラ管理ソフトウェア「Bare Metal Orchestrator(BMO)」と、クラウド基盤の展開を自動化する「Wind River Studio Conductor」という2つの運用自動化ツールが連携することで、Wind River Studioの管理コンソールからハードウェアもクラウド基盤もすべて管理できるようになります。従来は別々のツールで行っていたインフラとクラウド基盤の運用管理を一元化できるのです。

野地 BMOは、ハードウェアのプロビジョニングや運用監視を自動化するためのツールです。仮想化によって、RANの展開の仕方が大きく変化したことが、BMO開発の背景にあります。

従来のクラウド基盤は1カ所のデータセンターに多くのサーバーが置かれていますが、RANやエッジコンピューティング基盤は違います。小さなクラウドが全国津々浦々にばらまかれます。仮想RANでは数万ものクラウド基盤が全国に分散することになり、このスケールに対応できるオートメーションツールとしてBMOは開発されました。

ただし、BMOはハードウェアの管理にフォーカスしたものです。一方、Wind River Studio Conductorはクラウド基盤にフォーカスしたもので、これも大規模環境に対応することができる自動化ツールです。同じ目的で開発されたこの2つを組み合わせることは、非常に大きな相乗効果が見込めると考えています。

―― 2つのツールの連携について詳しく教えてください。

野地 BMOはインフラストラクチャ管理に向けたソリューションであり、サーバーやスイッチのハードウェア検出とプロビジョニング、オペレーティング・システムやファームウェアの管理、テレメトリー収集等をサポートします。このBMOとWind River Studio Conductorがプラグインによって接続されることで両者の情報が共有され、リージョナルデータセンター(RDC)からRANサイトにわたって、ハードウェアとクラウド基盤を包括的に管理することができるようになります。(図表2)。

図表2 Wind River Studio ConductorとDell BMOによる仮想RAN展開・運用のイメージ

Wind River Studio ConductorとDell BMOによる仮想RAN展開・運用のイメージ

また、Wind River StudioにはこのほかにもRANの運用を効率化するための様々なツールセットがあると聞いています。

中田 特徴的な機能がアナリティクスです。クラウド基盤の状態をリアルタイムに監視し、全体の状態変化を分析し、監視レポートを行います。BMOと連携することで、通信事業者様は運用の自動化と一元化が可能になり、より簡単に仮想RANを運用できるようになります。

ウインドリバーもデル・テクノロジーズも4Gの頃からモバイルインフラの仮想化に関わってきましたが、いま議論が進んでいるRANの仮想化には、従来のクラウド基盤とは異なるRAN特有の課題があります。それが、全国の基地局サイトに分散したサーバーとクラウド基盤を、どのように継続的に運用していくのかです。

BMOとWind River Studio Conductorが連携することで、1つの管理コンソールからソフトウェアの配布やアップデートが実行でき、全国各地のハードウェアの状態が監視できるようになれば、運用される方にとって大幅な工数の削減が見込めます。ハードウェアのファームウェアアップデートは非常に大変な作業を伴うものであり、これを一元的に行えるようになることは非常に大きなメリットになると思います。

野地 その通りです。5Gのような新しい技術は進化のスピードが早く、継続的なアップデートが欠かせません。基地局を展開すれば終わり、というわけにはいかないのです。

クラウド基盤は常にバージョンアップする必要があり、その影響はハードウェアにも及びます。新機能を継続的に検証してインテグレーションしていくプロセスが必要であり、いわゆるCI/CDを回していくにあたって非常に強力なソリューションになると考えています。

デル・テクノロジーズ プリンシパル・システム・アーキテクトの野地真樹氏

デル・テクノロジーズ プリンシパル・システム・アーキテクトの野地真樹氏

仮想RANの運用「3つのフェーズ」で多大な効果

―― ハードウェアとクラウド基盤の運用管理を一体化かつ自動化することで、どの程度の効果が期待できますか。

野地 運用の自動化と一口に言っても、そこには3つのフェーズがあります。事前の検証作業を意味する「Day 0」、仮想RANを自動で展開する「Day 1」、そして、その後の運用監視「Day2」です。先ほどは展開後の運用、つまりDay 2について述べましたが、事前検証済みのハードウェアとクラウド基盤を一体化すること、クラウド基盤を自動展開できることで、Day 0/1に関しても高い効果が見込めます。

調査会社のACG Researchが通信事業者様の業務プロセスをモデル化し、そこにDell Telecom Infrastructure Blocks for Wind Riverを当てはめた結果、初年度から25%程度、5年間トータルでは34%程度のOPEX削減効果が期待できると分析しています(図表3)。

図表3 Dell Telecom Infrastructure Blocks for Wind Riverの導入で期待されるOPEX削減効果

Dell Telecom Infrastructure Blocks for Wind Riverの導入で期待されるOPEX削減効果

中田 仮想RANを展開し、運用を開始した後については、サポート窓口が一元化される点もポイントです。Wind River Studioも含めてデル・テクノロジーズがサポートを提供することになりますが、この体制はグローバルで展開しているものですよね。

野地 その通りです。弊社は元々、キャリアグレードのサポート体制を持っており、今回のソリューションにもそれが適用されます。

例えば、特に重要度の高い問い合わせについては15分以内に応答する、もしくは4時間以内にリストアするといった高い基準を設けたサービスも、契約内容によっては提供することができます。

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