QRコードで情報発信も
TOOLS AGRIは、農作業の工程管理をソフトバンク携帯電話で行えるASPだ。日々の作業工程を携帯を使って簡単に入力でき、そのデータは携帯電話網経由でサーバーに自動蓄積されるため、大幅に作業を効率化できることが最大のポイントだ。
携帯のカメラ機能をワンクリックで起動し写真を撮影したり、コメント欄に気付いたことを書き込むこともできる。「例えば、ある一角だけ育ちが悪いと気になったとき、コメントと写真で記録しておくと、後で経験豊富な人が見て『土のリン分が足りないせいだ』などと原因が分かったりする。また、『虫』というキーワードでコメントを検索し、今年の害虫の傾向を探ることなどもできる」とツールズの根塚雅和氏は説明する。
さらに作業のチェックリストも加えられるほか、自動入力される日時や位置情報は改ざんできないため、産地偽装問題などへの対応ともなる。
QRコードを使って、消費者など向けに簡単に情報発信できる機能も面白い。公開用のコメントや写真を携帯から入力し、PCで印刷したQRコードを出荷する農作物に添付すれば、消費者はそのQRコードから農作物の生産過程を見ることができる。
他にもTOOLS AGRIは多くの機能を搭載している。「お知らせ」は、「2時間後に天気が急変するから農機具を片付けて」など、管理者が現場に必要な情報を「通常」「緊急」に分けてプッシュ送信する機能。「スケジュール」は、例えば複数の農業法人・農家で共有する農機具のスケジュール管理などに使える。「コミュニティ」は自由にトピックを立てて意見交換できるSNS機能だ。「天気情報」も非常に大切である。ワンクリックでそのエリアの天気がピンポイントで分かる。「点在する農地をどういう順番で回るか。天気情報をリアルタイムに見ながら調整している農業法人もある」(田中氏)という。
図表 TOOLS AGRIの主要機能 |
なお、TOOLS AGRIの利用料は、パケット定額プランを契約することを前提に無料。これはツールズがソフトバンク携帯の販売代理店でもあるためだ。
後輩の育成にも効果
TOOLS AGRIの提供開始からまだ数カ月に過ぎないが、導入ユーザーの間では早くも具体的な効果が表れているそうだ。まずは労働時間の短縮である。深夜までPCへの入力作業を行っていた前出の農業法人では、その分、新農法の研究に時間を回せるようになった。
また、日時や位置情報の改ざんができないことから、取引先の反応も非常にいいという。流通業の会社から「自分たちの契約農家に広げたい」という話も来ているそうだ。
さらに現場の情報がより詳しく分かるようになったことから、農場長など管理者の目が今まで以上に行き届くようになり、「後輩の育成がしやすくなった」という声も届いているという。こうした効果は今後2年、3年とデータが蓄積されていくに従い、いっそう高まっていく。
ソフトバンクとツールズの目標は全国に約3000社あるといわれる農業法人の5%以上にTOOLS AGRIを広めること。その目標が達成されたとき、日本の農業の姿はずいぶんと変わっていることだろう。