エコカーやエコ家電ほどの派手さはないものの、ネットワーク機器でも省電力を売りものにするケースが増えてきた。新製品は軒並み電力効率の改善を訴え、この業界でも「エコ競争」が激しさを増している。
ただし、市場には冷ややかな目も少なくない。照明や空調、あるいはサーバー等の他のIT機器と比べて、ネットワークは消費電力量そのものが小さいからだ。「コスト削減につながらない」「売り物にならない」といった声も方々から聞かれる。
だが、そうした見方はすでに時代遅れだ。アラクサラ ネットワークス営業本部マーケティング部の倉本雅之部長は、次のように話す。
「まったく状況が違ってきた。ルーター・スイッチの販売会社の方々も今では、省エネを有望な『提案ネタ』と考えている」
もちろん、「エコブーム」の単なる余波ではない。この変化には確かな理由がある。
重み増す「ネットワークの省エネ」
要因は大きく2つある。
1つは、一般企業に対するCO2排出の規制強化だ。本誌10月号の特集記事でも説明した通り、省エネ法が改正され、工場・事業所のエネルギー管理義務が厳格化された。今後、規制がさらに厳しさを増すのは確実。その証左となるのが図表1だ。
この表は、2007年のCO2排出量と1990年との比較値を、分野別に算出したものだ(環境省発表)。真っ先に対策を進めてきた産業分野が優秀な成績を収める一方、一般オフィスの対策が急務であることが分かる。「マイナス25%」の国際公約を果たすためには、まさに前政権が好んで発した「聖域無き改革」が不可欠。たとえ些少であっても、ネットワークを無視できる状況ではないのだ。
もう1つの要因は、機器ベンダーにとって、より直接的なものだ。
省エネ法は、特定の機器(自動車や家電等)に「トップランナー方式」による省エネ性能の基準を設けている。トップランナー方式とは、現行製品で最良の省エネ性能を持つ機器を基準とした目標設定をすることで、市場全体のエネルギー効率向上を図るもの(図表2)。製造・輸入者には、目標値をクリアする製品の販売、目標達成率の表示義務などが課されるが、この「特定機器」の対象にルーター・スイッチ製品が加えられた。小型ルーター、ボックス型L2スイッチについては2009年7月から適用され、大型ルーター、L3スイッチ等については2009年度内の政令化を目標に検討が進められている。
図表2 トップランナー基準による目標設定のイメージ |
省電力性能に対するユーザーの目がより厳しくなるのは必至。アラクサラも、「今秋以降の新モデルは、すべてトップランナー基準のクリアを目指したい」(倉本氏)方針だ。