[シリーズ]ICTを活用して風土改革に挑む! <第3回>【TIS】社内SNS発! 現場主導の会社改革

シリーズ第3回で紹介するのは、社内SNSの導入によって会社改革を成し遂げたTIS。ボトムアップで情報共有を進め、社員のエネルギーを顕在化させる場を生み出した。

書き込み内容は自由

TISでは既存の社内SNSソフトなどは使わず、同社自身でTCポータルを開発した。利用がスタートしたのは2005年12月のこと。最初は技術本部内の情報共有ツールとして使い始め、その後、口コミで利用者を拡大。07年4月に経営会議の承認を得て、全社展開の運びとなった。

TCポータルの主な機能は、(1)ブログ、(2)グループの設定、(3)検索、(4)質問などである。社員は知りたいことがあると質問欄に書き込むが、書き込み内容に制約はない。「機密情報を書かない」「誹謗中傷はしない」といった最低限のルールがあるだけだ。実名制にすることで、自由と責任を両立させている。「自由闊達な情報発信は社員の自主性から生まれる」との考えから、「自由」と「自主性」をキーワードに運用しているという。

質問は全社員の画面に表示され、解決策や解決のためのヒントをもっている社員がコメントする。「TCポータルへ行けば誰かが何か答えてくれる」(会田本部長)仕組みが構築されているのである。各社員がこれまでの経験などから得た、ナレッジマネジメントでいう「暗黙知」を気軽に共有できる場になっているといえるだろう。また、社員が書いた論文を投稿し保管しておくファイル機能もあり、こちらは「形式知」を共有する仕組みといえそうだ。TCポータルは社員の「困った」を解決するツールとして機能しているのである。

図表 TISにおけるナレッジ共有の進化
図表1 TISにおけるナレッジ共有の進化

社内SNSが大切な“居場所”に

情報共有を目的に始まったTCポータルだが、別の効果も表れている。TCポータルの運用がスタートしてから入社した若手社員の平井一徹氏は「もしTCポータルが存在していなかったら、会社をやめているかもしれない同期が思い浮かぶ」と話す。

ビジネスのスピードは速まるばかりだ。そうしたなか、経験が少ない若手社員は目の前のことしか見えにくくなりがちだが、TCポータルは若手社員に新しい視野をもたらし、会社という場はもっと広い世界なのだと示す役割も果たしているのだという。

世界を広げる役目を担っているのはグループ機能だ。IT企業らしく、特定の技術を話題にするグループがあるのは当然だが、自転車など同じ趣味をもつ社員同士の集まりや駄洒落が好きな社員のためのグループもあったりと、まさに何でもあり。このグループ機能のおかげで、「社内に居場所があると感じる」とは藤原主任の弁だ。また、TCポータルをきっかけにプログラミングの勉強会に参加している平井氏は「従来なら知り合えなかった上の人に会える。TCポータルがなかったら、会社における私の世界はだいぶ閉じたものになっていただろう」と語る。

社員の思いを実現へ駆り立てる場=力としてもTCポータルは機能している。例えば、ある人事部の社員が「社史をつくりたい」と考えたものの、周りに協力者が見つからず、半ばあきらていた。しかし、TCポータルに社史作成に対する思いを綴ったところ、賛同者が現れ、実現へ向かって動き出すことができたという。「エネルギーがある人が集まりやすくなった」とTCポータルの運営に当たっている先端技術センターの五味久恵主任も頷く。

さらに、本部のスタッフ部門と現場との距離感を縮める効果も生み出した。現場の社員とスタッフ部門が知り合う機会は少なく、関係は希薄になりがちだったが、今ではTCポータルを通して個々の社員が知り合いになっているからだ。最近、現場からは「スタッフ部門がこぼしたボールは私が拾おう」との発言も飛び出しているという。TCポータルによって、組織と組織の関係から、人と人の関係への変化が起こり、組織の一体感を醸成しているのだ。

TCポータルの運用を開始して5年余り。会田本部長は、「TCポータルを使っている人はイキイキしている」と話す。その要因は楽しむことだ。藤原主任は「推進する人がいちばん楽しく使うことが大切」と語り、平井氏も「社員みんなが幸せになれることに関われ、私自身も楽しんでいる」と口を揃える。

月刊テレコミュニケーション2011年3月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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