――2010年度上期の連結決算で、営業収益は前年同期比4.4%減の5090億円、営業利益は同21.2%減の416億円と減収減益でした。この間、苦闘してきたNTT東西は、ようやく下げ止まって増収ないし増益が少し見えてきたようですが。
有馬 NTT東西についていえば、「フレッツ光」を中心としたブロードバンドサービスの割合が大きくなり、東日本は音声収入の減少をIP系収入がついにカバーし、西日本もその差が縮小しています。つまり、そういう転換点を迎えたということです。
当社についていえば、加入電話からIP電話に移行すれば、どうしても中継部分の役割はどんどん減っていきますから、大きく影響を受けざるを得ません。また、NTTコムでないと提供できない企業向けネットワークサービスは当然ありますが、一般的にはNGNに需要がシフトするでしょう。
――電話からIPへという大きなトレンドは、御社のサービスに多面的な影響を与えているわけですね。
有馬 NTT東西は「レガシーからIPへ」という戦略で事業は成り立ちますが、当社はそういうわけにはいかないということです。ですから、音声系の減収をカバーするには、IPベースの他の事業を新たに開拓しなければならないのです。これは単体のみならず、グループの課題としても取り組んでいるところです。
ネットワークを持つ強み活かす
――そうしたなかで、今後はクラウドサービスである「BizCITY」が御社の大きな柱になってくるわけですね。
有馬 そうです。現在の通信業界を見渡してみても、クラウドほど新たなチャンス、かつ大きな流れになりそうなものは他にはありません。クラウドには、さまざまなプレーヤーが入ってきていますので、我々は流れに乗り遅れることなく、スピード感を持って対応し、常に先端を走りたいと思っています。それこそが、NTTグループのなかでの当社のミッションでもあります。
――世の中がクラウド時代へと向かい、通信キャリアや機器ベンダー、SIer/NIerなどさまざまな業界から相次いでクラウド市場に参入するなかで、「誰がユーザーのニーズを勝ち得ていくのか」ということに注目が集まっています。
有馬 最終的に誰が勝つかはまだ誰にも分からないでしょうが、クラウドはネットワークがあって初めて活きるサービスなので、ネットワークを持っている強みを活かし、品質を担保しつつ、低コストで提供していきたいと思っています。その点、我々は決して不利なポジションとは思っていません。
――いわゆるIaaS、PaaSはキャリアが得意とするところですが、アプリケーションの部分はどのように考えていますか。
有馬 メール等、一部の汎用的なものは自ら手掛けていますが、基本的には「餅は餅屋」ですから、今後ともアプリケーション事業者と連携して進めていきます。そういう意味では、当社が手掛けるクラウドサービスは、信頼性の高いクラウド基盤の提供が最も強い差別化ポイントということになります。