韓国モバイルビジネス動向ウォッチ[第4回]サムスンが仕掛けたNFCモバイル決済標準化への道

モバイル先進国、韓国をウォッチしながら、新しいモバイル関連ビジネスの種を見つけていく本連載。今回のテーマはNFCだ。

米グーグルと韓国サムスン電子は2010年12月6日、Android 2.3(Gingerbread)を搭載した「Nexus S」を発表した。注目の新機能の1つは、NFC(Near Field Communication)チップの標準搭載だ。そこにはNFCのモバイル決済におけるデファクト化へ向けたサムスン、ひいては韓国政府の思惑が感じられる。

Nexus S
Nexus S

韓国では2005年から携帯電話事業者3社がNFC Type A(Mifare)を使った電子マネーサービス「モバイルTマネー」を提供している。日本でFeliCaを活用したおサイフケータイが始まったのは2004年のことだから、韓国でもほぼ同じ時期に始まったことになる。

日本ではほぼすべての携帯電話にFeliCaが搭載されているが、韓国では異なっている。携帯電話にNFCチップが内蔵されているわけではなく、モバイル決済を利用したい人はSIM+NFCのコンボカードにSIMカードを差し替える形態が一般的であった。

しかし、ここに来て韓国の携帯電話事業者は、携帯電話やスマートフォンへのNFCチップの標準搭載を積極的に開始。サムスンに至っては、今後発売する携帯電話とスマートフォンすべてにNFCチップを標準搭載すると明言した。また、KTはモバイル決済におけるNFCの世界標準化に向けた活動を活発に行っている。

NFCがモバイル決済の世界標準となれば、NFCをすでに採用する韓国にとって、その恩恵は計り知れない。カードリーダーや決済系システムなど、既存インフラがすべてそのまま利用でき、また既存ユーザーもそのまま国外でモバイル決済が行えるのである。

橋本清治(はしもと・せいじ)

IT業界での30年の経験を生かし、某外資系通信機器ベンダー勤務の傍ら、エムアンドエムリサーチを運営。主に海外の通信事情リサーチやベンダーの日本進出の支援を行う。現在は特に韓国のモバイル通信事情を注視している。表面的な事実の調査だけでなく、必要があれば現地調査も行う行動派リサーチャ。“真実は体で確かめる”が身上。コンタクトはinfo@mmrjp.comまで

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