総務省、「条件付き電波オークション」導入へ

総務省は9月28日、新たに割り当てられる周波数について、一部条件付きで電波オークションを導入する方針案を公表した。従来の総合評価方式に新たな選択肢が加わることになる。条件付きオークションの成否の鍵を握る制度設計をどうするかが今後の課題となりそうだ。

総務省は2022年9月28日、「新たな携帯電話用周波数の割当方式に関する検討会」の第10回会合を開催し、取りまとめ(案)を公表した。

今年3月にオークション方式などのメリットやデメリットへの対応策などをまとめた「1次取りまとめ」を受け、今後、5GやBeyond 5G向けに新たに割り当てられるミリ波など高い周波数帯に対応した周波数割当の考え方を取りまとめるとともに、新たな割当方式の制度設計に係る検討課題を整理したものだ。

割当方式の方向性として、ミリ波などの高い周波数帯や他の無線システムとの共用が必要となる周波数帯は、事業者ごとに想定する電波の利用ニーズが多様であると考えられることから、「事業者の創意工夫によるイノベーションや新サービスの創出を後押しすることで、電波の有効利用を一層促進することが有効である」と指摘。そのためには、現行の総合評価方式に加えて、周波数の経済的価値をより高く評価する者に周波数を割り当てる「条件付きオークション」を選択可能となるよう、検討を進めることが適当であるとした。

条件付きオークションを導入

条件付きオークションを導入する

従来の総合評価方式(特定基地局開設料制度)に加えて、「条件付きオークション」が新たな携帯電話用周波数の割当方式の選択肢に加わることについて、マルチメディア振興センターの飯塚留美構成員は「賛同する」としたうえで、「今後割り当てられる周波数にすべからく条件付きオークションを適用するのではなく、政府の政策目標や帯域によって、どちらの方式が最適であるかの検討を利害関係者の間で合意形成する必要がある」と述べた。

また、海外では条件付きオークションは割当済みの周波数についても適用されるケースがあるとして、「免許期間が終了した後の再割当であっても、免許期間の延長や更新に加えて、総合評価方式、条件付きオークションも適用可能とすることが適切と考えられる」と指摘した。

条件付きオークションの実施にあたっては、付与する条件の内容、最低落札価格の算定方法、排他的な免許申請期間などの制度設計の検討が必要となる。

構成員からは、「条件付きオークションが成功するか否かに直結するため、専門家にきちんと制度設計をしていただきたい」(横浜国立大学大学院 国際社会科学研究院・佐野隆司准教授)、「細かいメカニズムが求められるだけに、幅広く経済学者に意見を聞く必要がある」(東京経済大学 経済学部・黒田敏史准教授)といった意見が出された。

座長を務める東京大学大学院 経済学研究科・柳川範之教授も「具体的な制度設計が〝肝”となる。専門家の知見を活かしつつ制度設計することがポイント」と重要性を強調した。

座長の柳川範之氏

座長の東京大学 大学院 経済学研究科・柳川範之教授

ただ、「ベストな制度設計をしようとすると、なかなか難しいところがある」として、「少しずつ改善を加え、よりベターなものを作っていくというアジャイル的な発想が全体として必要なのではないか」とも語った。

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