NECは2022年9月5日、宇宙空間で使用する光通信システムとして世界最高水準の通信速度である10Gbps光通信機のプロトタイプを製造したと発表した。
今回の開発品は2023年度に打ち上げ予定の技術試験衛星9号機(ETS-9)に搭載され、宇宙環境での動作確認が行われる予定だ。軌道上での動作確認の後、長期信頼性の一層の改善と小型化・低コスト化を並行して進め、製品化につなげるとしている。
NECが開発した10Gbps光通信機
本研究開発は、国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)の高度通信・放送研究開発委託研究「衛星搭載光通信用デバイスの国産化及び信頼性確保に関する研究開発(採択番号18601)」において実施されたものだ。
宇宙光通信の実用化はこれまで欧州が先行し、2017年に欧州データ中継システム(EDRS)の中で1.06μm帯の信号光波長を用いた通信速度2Gbpsの静止衛星-低軌道衛星間通信の利用が始まった。
日本においては2020年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が光衛星間通信システム「LUCAS」を打ち上げ。地上用の高速な光通信システムで普及している1.55μm 帯を使用し、静止軌道衛星-低軌道衛星間の2Gbps光通信を実現している。
NECが今回開発した10Gbps光通信機も同様に1.55μm帯を使用。静止軌道衛星-地上間、静止軌道衛星-低軌道衛星間に相当する約4万kmの長距離システムへの適用に向けて、最適な誤り訂正符号化技術を採用するなど、受信感度改善のための各種施策を適用し、回線成立条件の緩和につなげたという。
長期間運用が前提の静止軌道衛星は、搭載する各種装置に高い信頼性を必要とする。10Gbpsの超高速動作領域では宇宙環境での動作保証がされた部品が少ないため、地上システム向け光部品および高周波部品の宇宙システムでの適用を目的とした新たな選別・実装手法を開発した。
また、静止軌道衛星ベースの汎用衛星通信放送システムの高速化(HTS:High Throughput Satellite)におけるマルチーユーザRFリンクとの親和性およびその先のネットワーク化、また地上通信システムとのシームレスな接続に向けて、地上システムで標準的に使用されるイーサネットをインターフェースとして採用している。