富士通 大谷常務が語る携帯電話戦略「ドコモとauでトップ取り国内1位へ」

2010年に携帯電話事業を統合した富士通と東芝。富士通本体はNTTドコモ、新会社はauとソフトバンクモバイルと3キャリアに対応する。執行役員常務で新会社の代表取締役社長も務める大谷氏は、出遅れたスマートフォンを強化するとともに、au向けの台数を増やして国内シェア1位を目指したいと意気込みを見せる。

――2010年10月、富士通と東芝の携帯電話事業が統合し、富士通東芝モバイルコミュニケーションズが発足しました。代表取締役社長の立場から、統合の成果をどのように見ていますか。

大谷 富士通はもともとNTTドコモ向けの携帯電話だけですが、東芝はauを中心にソフトバンクモバイル向けにも端末を作ってきました。昨年からは、Windows Mobileのスマートフォンをグローバルも含めて展開しています。技術面では、富士通はセキュリティやセンサーに力を入れており、東芝は液晶テレビ「REGZA」に代表されるように映像系に強みがあります。

このように、ざっと見渡してもお互いにかぶっている部分がありません。その一方で、富士通はドコモとSymbian、東芝はauのKCP+と、プラットフォームを開発している点が共通しています。また、販売代理店の取り扱い上位3社が同じで、代理店関係者には非常に喜んでいただいています。まじめな社風も似ており、いい相手と一緒になったという印象を深めています。

――現場での統合は順調に進んでいますか。

大谷 富士通の携帯電話事業のメンバーは、PCやワープロ、プリンターなど他の事業から集まってきた“寄せ集め”です。新たに東芝からメンバーが来ても何の違和感もありませんし、受け入れる土壌ができています。今のところは非常にいい具合に動いています。

――NECは携帯電話事業を分社化してカシオ日立モバイルコミュニケーションズと統合しました。富士通は携帯電話事業を本体に残し、東芝の携帯事業を傘下に置いた形ですが、どのように事業のすみ分けを図るのですか。

大谷 富士通の携帯電話事業はそのままで、引き続きドコモ向けに携帯電話を供給します。従来、東芝がドコモ向けに納めていた機種は富士通の名前で出します。新会社ではauとソフトバンク向けにビジネスを行います。富士通はドコモ向けでシェアトップです。東芝もかつてはau向けでシェアトップだったので、その水準まで回復すれば、国内の出荷台数で1位になることも不可能ではないはずです。

“四重苦”を乗り越える

――東芝の防水機能を搭載したスマートフォンがドコモとauから発売されます。富士通の技術力を活かしたスマートフォンを期待して待っているユーザーも多いのではありませんか。

大谷 富士通がやや遅れを取っているスマートフォン事業をリカバリーさせることも、東芝を買収した目的の1つです。スマートフォン事業の統合により開発者が一気に100人ほど増えるので、スマートフォン開発を加速させたいと考えています。2011年夏には「Fブランド」のスマートフォンを発売できると思います。

――国内の端末メーカーはスマートフォンへの対応で遅れを取ってしまいましたが、何が原因だったのですか。

大谷 スマートフォンは、我々の予想を上回る速さで普及が進んでいます。国内メーカーは油断したわけではないのでしょうが、やや後手を踏みました。当社も含めてPC事業を手がけているメーカーは、「AndroidやWindowsはやる気になればできる」と高をくくっていたところがあります。我々にとっては、フィーチャーフォンの方がよっぽど開発にパワーが必要だからです。とはいえ、今後はスマートフォンにも本腰を入れて取り組んでいきます。

月刊テレコミュニケーション2011年1月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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大谷信雄 (おおたに・のぶお)氏

1975年4月富士通入社。2000年12月モバイルフォン事業本部統括営業部長。05年7月モバイルフォン事業本部長代理。07年6月常務理事モバイルフォン事業本部副本部長。09年6月常務理事モバイルフォン事業本部長。同年10月執行役員(兼)モバイルフォン事業本部長(兼)ユビキタスプロダクトビジネスグループユビキタスビジネス戦略室長。2010年4月執行役員常務(兼)ユビキタスプロダクトビジネスグループ長(兼)ユビキタスビジネス戦略室長。同年10月執行役員常務(兼)ユビキタスプロダクトビジネスグループ長、現在に至る

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