SPECIAL TOPICローカル5Gの円滑な導入に貢献する2つの電波シミュレーションツール

構造計画研究所が、ローカル5Gの免許申請に必要な「カバーエリア図」の作成を大幅に効率化するソフトウェア「KCAMP(キャンプ)」をリリースした。電波の伝搬状況を実態に即した形で可視化する解析ツール「Wireless InSite」とともに、構築支援事業を手掛けるSIer/NIerなどに向けて展開、ローカル5Gの円滑な導入に貢献していく。

「ローカル5Gには、これまで無線通信に関わったことのない方々が多く参入される。その時に、電波に詳しくないと免許申請ができないというのでは普及の足かせになる。比較的簡単に扱えて、免許申請に必要なアウトプットがきちんと出せるツールが必要だと考えた」

構造計画研究所 電波技術部 室長の江森洋都氏は、2021年1月に提供を開始したローカル5G免許申請用エリア描画ツール「KCAMP」の開発コンセプトを、こう説明する。

煩雑なカバーエリア図の作成を効率化するKCAMP構造計画研究所は、コンピューターによる建築物の構造計算作業の効率化を主導したことで知られるエンジニアリングコンサルティング企業だ。

建築物を取り巻く自然現象(地震、津波、風など)の解析・シミュレーションに強みを持ち、通信市場向けにも電波伝搬・ネットワークシミュレーションに関するコンサルティング、解析ソフトウェアの開発・販売など幅広い事業を展開している。

KCAMPは、構造計画研究所が培ってきたシミュレーションの技術・ノウハウを活かして開発した、ローカル5Gの無線局免許申請に必要となる「カバーエリア図」を作製するためのツールだ。

1月に28GHz帯(ミリ波)ローカル5Gとそのアンカーバンドとして使われる自営等/地域BWAをサポートする「バージョン1.0.0」を発売。5月には4.6GHz帯(Sub6帯)にも対応した最新版「バージョン1.1.0」がリリースされた。

カバーエリア図は、開設を希望するローカル5G局近辺の地図上に、基地局からその場所に届く電波の強さ(受信電力)が、①サービス提供が可能なレベルとなる「カバーエリア」と、②それより弱いが他のローカル5G局などに影響を与える可能性がある「調整対象区域」を記したもの。総合通信局が免許の審査を行う際の判断材料とされるほか、ローカル5G局間で干渉調整を行う際の資料としても利用される。

カバーエリア図の作製は以下のような手順で行われる。まず対象となるエリアの地図を100m四方の(条件によってはより細かな)メッシュで切り分け、それぞれのマス目における基地局からの受信電力を、総務省が電波法関係審査基準で示している計算式を使って推定。その数値に基づいてカバーエリアと調整対象地域を判別し地図に記していく。作業が煩雑でノウハウも知られていないことから、カバーエリア図の作製は、現状では専門業者に委託されることが多いという。

KCAMPは、移動通信を手掛けた経験のないSIer/NIerなどの企業が、この作業を容易に行えるようにしたものだ。

周波数帯や帯域幅などの共通データを事前に設定しておけば、基地局の設置予定場所の座標、送信電力、アンテナの高さ・利得・向きなどの項目を入力し、設置場所周辺の伝搬環境を大都市、中小都市、郊外、開放地の中から選択するだけで、オンライン地図(国土地理院地図、Open Street Map)を背景としたカバーエリア図を作製することができる。

KCAMPを用いたローカル5G(ミリ波帯)カバーエリア図の作製イメージ

KCAMPを用いたローカル5G(ミリ波帯)カバーエリア図の作製イメージ。基地局の座標や送信電力などのデータを入力、伝搬条件などを選択するだけで、カバーエリア図を作製できる

電波の減衰に大きく影響する標高データは国土交通省が公表している基盤地図情報数値標高モデルを10mメッシュの精度で取り込んで利用する。

障害物の影響を強く受ける28GHz帯では基地局からの電波が直接届く場所と、見通し外となる場所を切り分け、より精度の高いカバーエリア図を作製することもできる。別途有償となるが3D地図を使って地形だけでなく建物により見通し外となる場所を判定して計算することも可能だ。

KCAMPで作成されたこの地図の上に、自己土地の範囲や業務地域を描画ソフトなどで書き加えれば、免許申請の添付書類として提出できるカバーエリア図が完成する。

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