キーパーソンが語る

「地域情報化はSDGs貢献」早大・三友教授に聞く、地域から始める日本のICT国際展開

聞き手◎太田智晴(編集部) 2021.05.20

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早稲田大学大学院
アジア太平洋研究科 教授
三友仁志氏

5G時代、ICTは地域の様々な課題を解決できるのか――。地域情報化に長年力を注いできた早稲田大学の三友仁志教授は、従来のやり方のままでは「日本はハッピーにならない」と訴える。必要なのは、地域情報化をICTビジネスの国際展開の「テストベッド」(実験台)と捉える発想。地域インフラの課題と電波政策の今後、地域情報化のあるべき姿を聞いた。


――三友先生は、地域情報化に長年携われてきました。新型コロナウイルスの感染拡大、5Gの開始などを背景に今、社会のデジタル化が大きく加速していくとの期待も高まっているわけですが、地域情報化の現状をどう評価されていますか。

三友 日本の情報化は、インフラも含めてですが、2000年までは大変遅れていたと言っていいと思います。

それが2000年以降、e-Japan戦略やu-Japan政策等、いろいろな名前がありましたが、ブロードバンド・ゼロ地域解消事業など、矢継ぎ早に様々な普及促進策を打ち出し、その結果として日本は特にインフラ面では非常に進んだ国だと評価されるようになり、またそれを自画自賛するところもあったかと思います。その反面、利活用については遅れが目立ったことから、ここ数年はICTの利活用を促進する政策にずいぶんと取り組んできました。

ところが新型コロナで都心も地方もICTを使わざるを得ない状況になって、よく分かったことは、実は「地域インフラの整備はまだ十分でなかった」ということでした。ビデオ会議が行えるレベルにないインターネット環境の地域は結構ありました。特に学校のインターネット環境が駄目でした。

政府の地域情報化事業は連綿と続いてきて、成果を挙げたものもあるのですが、いざカタストロフィ的な変化が起きて、それに対応できたかというと、残念ながら非常に難しかったわけです。

――自画自賛していたインフラですが、実状はだいぶ異なっていたのですね。

三友 その反省から総務省は今、約500億円の補正予算を組んで、光ファイバー整備の支援事業を行っています。これで地域のネットワークはだいぶ良くなると思いますが、最大の問題は人口減少なのです。

人口減少が急速に進み、この先10年、20年の間に人口が半分になるかもしれない地域にネットワークを構築して、その後事業として継続できるのか─。誰かがその費用を負担する必要があります。

そこで現在、総務省の中でブロードバンドサービスのユニバーサルサービス化について議論しています。国民があまねくブロードバンドサービスを享受できるという意味で、ユニバーサルサービス化は良い考え方なのですが、ユニバーサルサービス基金の発動を伴う場合、正解のない問題を解くようなものだと思っています。

 

三友早稲田大学大学院教授

 

――どういうことですか。

三友 今、通信サービスの中でユニバーサルサービスに指定されているのは固定電話と緊急通報、第一種公衆電話の3つで、これらは基本的にすべてNTT東西が提供しています。

ところがブロードバンドは異なります。NTTだけではなく、電力系やCATVなど数百の事業者が提供しており、全国でサービスを提供している事業者もいれば、ある地域だけで提供している事業者もあるなど、その事業形態も様々です。NTTと地域の事業者ではコスト構造がまったく違いますから、一律での補助は難しく、場合によっては補助額が莫大になる可能性があるわけです。

つまり地域のブロードバンドインフラを今作りながら、片方ではその維持をどうしていくかという問題も並行してあって、長い目で見ると何が本当に正しいのかは分かりません。

――難しい問題ですね。

三友 難しいです。なおかつ、地域の産業を支えるためには、工場や農場、漁場などにもネットワークが必要になってきます。光ファイバーは世帯カバー率で見ると今や100%近くになっていますが、実は100%ではないのですね。IoT時代になると、人がカバーされているだけでは十分ではありません。

その一方、携帯電話の通信スピードが上がり、ブロードバンドサービスとして光ファイバーと競争しています。そうしたなか、「どちらか片方だけを補助するのはいかがなものか」という問題もあります。

――通信行政における重要課題の1つとしては、これからの電波政策の在り方もあります。三友先生が座長を務める「デジタル変革時代の電波政策懇談会」で現在議論されていますが、楽天モバイルが懇談会の中でプラチナバンドの再割当を要望し、大きな注目を集めています。

三友 電波行政において国ができることは、電波の割当と電波が有効活用されているかどうかをチェックすることの2点です。国民経済の観点から競争促進が良いことであって、そのためには電波の再割当が必要という結論に至るのであれば、それは1つの方向性です。もちろん事業の継続性を前提に投資しているわけですから、一度割り当てた電波を簡単に他へ割り当てるわけにはいきませんが、検討に値します。いろいろな考えがあるでしょうが、懇談会の構成員と議論を深めたいと思います。

著者プロフィール

三友仁志(みとも・ひとし)氏

神奈川県生まれ。専修大学教授、早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授、Stockholm School of Economics 客員教授、Aalto大学(フィンランド)客員教授等を経て、現職。博士(工学)。情報通信学会会長、International Telecommunications Society 副会長、早稲田大学デジタル・ソサエティ研究所長、総務省 情報通信行政・郵政行政審議会委員、情報通信審議会専門委員、総務省 地域情報化アドバイザーなど。専門分野はデジタルエコノミー、デジタルソサエティ論
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