東京建物がZETAでスマートビル化 ビル統合管理システム「DBM」を国内初導入

東京建物はこの9月、日本橋のビルをLPWA規格のZETAを用いてスマートビル化した。点検業務や設備管理を効率化し、従業員の満足度を高めることで、人材不足という業界全体の課題に対応する。

総合不動産会社の東京建物(本社・東京都中央区)が、自社で保有や管理を行う建物のスマートビルディング化に取り組んでいる。その第1弾として9月1日、「東京建物日本橋ビル」において、中国ビル管理会社RIVERINE社の子会社FOURTHWALL社が開発したクラウドベースのビル統合管理プラットフォーム「DBM(Dynamic Building Matrix)」の実運用を開始した。

DBMは複数の機能モジュールから構成されているが、東京建物が今回導入したのは業務管理システム、設備管理システムなどだ。LPWA規格ZETAの管理プラットフォーム「ZETA Cloud Platform」とシームレスに連携させたうえで、巡回点検や設備保守、清掃といったビル管理業務を1つのプラットフォームに統合し、業務フローのデジタル化を実現している。

図表 「DBM」の全体イメージ(クリックして拡大)

図表 「DBM」の全体イメージ

紙ベースの点検業務を電子化ビルの点検業務は、各フロアや共用部、外周、植栽など広範囲にわたる。また、地下タンクや埋設配管の点検、トイレや給湯室内の水の残留塩素値等のチェック、高圧受電盤や電灯盤、動力盤の電圧・電流の記録なども日常的に行わなければならない。

DBMの業務管理システムは、これらの点検ポイントにNFCやQRコードを貼り付け、従業員がスマートフォンで読み取ると自動的に記録される仕組みだ。

東京建物日本橋ビルではNFCを31カ所、QRコードを375カ所に設置している。NFCは日常的な点検業務の開始の通知、QRコードは臨時トラブルの報告というように使い分けているという。

例えば巡回中に「コーヒーがこぼれて床が汚れている」「鍵のカバーが破損している」などの異常を見つけた場合、付近にあるQRコードをスマホでスキャンするとともに、現場の様子を撮影した画像をセンターに送る。センターのマネージャーはスマホ上に「臨時タスク」を発行し、それを見た清掃のマネージャーがスタッフを派遣する。QRコードが詳細な位置を通知するので、清掃スタッフは迷わず現場に駆け付けることが可能だ。

従来、ビルの点検業務は基本的に紙ベースで行われていた。点検スタッフは、用紙と記入時に下敷きとして使うための画板を持ってビル内を歩き回り、点検内容を現場で用紙に記録する。デスクに戻った後、用紙の記録を見ながらExcelに転記するため、非常に手間がかかっていた。

また、高い位置にある点検場所に脚立やはしごを使って上る際、用紙や画板が邪魔になるため、安全管理上の不安もあった。

業務管理システムの導入後は、入力作業の簡略化はもちろんのこと、スマホをポケットに入れれば脚立やハシゴも両手を使って上ることができるので、より迅速かつ安全に点検業務を行えるという。

設備管理システムは、トイレの洗い場の石鹸水タンクに水位センサー、地下の備蓄倉庫内にある汚水・雑排水配管に水圧センサー、階段踊り場に人感センサーを設置し、それぞれ石鹸水の残量や配管づまり、不審者の侵入の検知に活用している。

地下の備蓄倉庫内にある汚水・雑排水配管に水圧センサーを設置

地下の備蓄倉庫内にある汚水・雑排水配管に水圧センサーを設置し、
ZETA 通信を利用して配管づまりの検知に活用している



このうちトイレの石鹸水タンクは従来、清掃スタッフが2週間に1回のペースで巡回し補充していたが、残量が少なくなるとスマホを通じて通知されるので必要なときに補充すればよくなり、負荷が軽減されるという。

ZETAは、①容量が比較的大きく、イベント発生時に即時にデータを送る「ZETA-P」、②容量が比較的小さく、送信周期を待ってデータを送る「ZETA-S」という2種類の通信プロトコルを用意している。トイレのドアセンサーなど即時性が求められるものについてはZETA-P、石鹸水タンクなど確実性を重要視するものについてはZETA-Sを採用。各センサーが取得したデータは、東京建物日本橋ビル屋上に新たに設置したアクセスポイント(AP)と、昨年行われたZETAの接続実証実験に使用した東京建物八重洲ビル屋上のAPという2通りのルートでクラウド上のサーバーに蓄積される。

ちなみに、ZETAはMoteと呼ばれる電池駆動の中継器を用いてメッシュネットワークを作ることで広いエリアをカバーできるのが最大の特徴だ。今回、地下フロアのセンサーはMoteを介して、日本橋ビル屋上のAPとは最大2ホップ、約230m離れた八重洲ビル屋上のAPとは4ホップで接続している。

「中継器によるマルチホップ通信で、ビルの地下など電波の届きにくい場所も安定的に通信できることもZETAを採用した決め手の1つ」と東京建物 ビルマネジメント第一部 管理グループ 課長代理の小澤大輔氏は話す。

設備や業務の状況、センサー情報などは、可視化統合システムによりどこからでも遠隔監視・管理を行える。

可視化統合システムでは、ソフトウェア上にビル全体の3Dモデルを構築し、屋上や地下も含めて全フロアが正確にモデリングしている。このため、異常が検知された場所を詳細に把握することが可能だ。また、臨時業務も含めたすべてのタスクも表示される。「DBMはタスクもデジタル化することで、業務全体の効率化を実現する」とZETA Alliance 代表理事でテクサー代表取締役社長の朱強氏は述べる。

月刊テレコミュニケーション2020年10月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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