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<特集>ローカル5G中間報告

日本と違う独ローカル5G 公衆向け周波数をプライベート用途に運用

文◎岸田重行(情報通信総合研究所) 2020.08.19

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日本と並び自営向け周波数免許付与が進んだドイツ。並行して、通信キャリアの公衆向け周波数を使うが、運用はプライベートに行える「キャンパス・ソリューション」という独自の方法も提供されている。

 
「ローカル5G」という用語は、もともと日本独自の呼び方である。海外では、自営セルラー網については「プライベートLTE」として4G時代から導入事例が各地にあった。ただし、そのほとんどは通信キャリアの免許帯域を活用した自営設備のため、セルラー通信技術を使う想定で周波数免許を与えるという制度運用は、警察や消防、救急など公共安全用途(パブリックセーフティ)を除いては、一般的ではなかった。

そうしたなか、世界に先行して5Gを意識した自営(プライベート)用途向けの周波数免許付与が進んだのは、日本とドイツである。本稿では、ドイツにおけるローカル5Gの動きを整理する。

桁違いに高いローカル5G電波利用料ドイツでは、日本よりもやや早い2019年11月から、ローカル5G向け周波数免許の申請受付が始まった。周波数帯域としては、ミッドバンドの3.7~3.8GHz帯である。日本では、ミッドバンドの4.5GHz帯とハイバンドの28GHz帯がローカル5G向けに確保されているが、ドイツでは現状、ミッドバンドのみである。

4G、5Gといったモバイル通信向けの周波数免許は、世界的にはオークションによって落札する形が主流といえるが、ローカル5Gに関しては、エリアオーナー向けの免許付与であることから、ドイツでもオークションは開催されていない。しかし、電波は限られた資源であることから、日本と同様に電波利用料が設定されている。

ドイツの電波利用料は、以下の算定式により決められる。

  電波利用料=1000ユーロ(基本料金)+B(帯域幅)×(t期間)×5×(6a1+a2)(面積)
 B:  割り当て周波数帯域(10~100MHzの範囲)
 t:  免許期間(年)
 a1とa2:  免許エリア面積(km2)
・a1は伝送インフラ整備済の地域
・a2はそれ以外の地域

 

帯域幅を広く、エリアを広く、期間を長く申請すれば、それに応じて電波利用料が高くなる。また、電波インフラ未整備のエリアについては、電波利用料を減免する形となっている。例えば、6.5km2の工場敷地(2.5km×2.6km)で50MHz幅を10年間使用する場合、合計9万8500ユーロ(約1120万円)となる。

日本のローカル5Gの電波利用料が、帯域幅、エリアの広さ、利用期間に関係なく、基地局の数(1台当たり2600円/年)と端末の数(1台当たり370円/年)で決まるのと比べると、ドイツは桁違いに高い。

しかし、ドイツブロードバンド協会の幹部は「ローカル5Gの電波利用料が、特に中規模企業に不釣り合いな負担となり、結果として周波数申請を躊躇することのない仕組みとすることで、連邦政府と合意できたことを喜んでいる」と発言しており、妥当な料金設定だとの評価をしている。

ドイツでは、ローカル5G免許付与の議論が、「インダストリー4.0」の文脈で進んできた経緯がある。背景にあるのが、ドイツ企業の競争力確保だ。ドイツ経済産業省のデジタル産業・スタートアップ委員であるジャゾムベック氏は、ローカル5G免許付与により、今後は通信キャリアの設備に依存せずに、インターネットとは隔てられたモバイル通信設備を整備できることで、新たなレベルのセキュリティが得られる、という趣旨の発言をしている。

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著者プロフィール

岸田重行(きしだ・しげゆき)氏

株式会社情報通信総合研究所 ICTリサーチ・コンサルティング部 上席主任研究員。国内外のモバイル通信市場に関して、サービス動向から企業戦略まで広くカバーする

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