SD-WANで四国のインフラを守る

インフラ企業の西日本高速道路エンジニアリング四国は、SD-WANの導入により高速化と災害対策を両立した。バックアップ回線を構築し、通信を最適に振り分けることで普段の業務にも有効活用している。

高速道路の建設やサービスエリアの運営などを通して、日本のインフラを支えるNEXCO西日本。

そのグループ会社で、四国エリアの道路や電気・通信設備などを管理しているのが西日本高速道路エンジニアリング四国だ。

西日本高速道路エンジニアリング四国 経営企画本部 経営企画部 情報システム課長の三宅賢二氏は、同社のネットワーク環境について「ネットワークの拠点は大きなインターチェンジに併設されているケースが多い。山間部ほどではないが、都市部に比べると回線はどうしても細くなりがちになる」と説明する。

そこで同社は以前から、本社と拠点に、シトリックス・システムズのWAN高速化装置「WAN Scaler」を導入し、回線を補強していた。

ただし「以前とはネットワークの環境が変わってきた」(三宅氏)。

大きな変化は、拠点間の通信が本社からデータセンター(DC)を経由するようになったことだ。「以前は本社にファイルサーバーなどを集約していた。ネットワークも1本しかないため、仮に停電などで本社がダウンすると全拠点が停止する状態だった。そこで、BCP(事業継続計画)のため、本社から電源環境などの災害対策が整っているDCに移行した」と説明する。

また、勤怠管理システムなどをクラウドで利用するようになり、社外へのアクセスが増加。そのため、業務におけるネットワークの重要性が高まっていた。これらの理由から、同社は、回線の冗長化などを通したネットワークの信頼性向上を目指した。

西日本高速道路エンジニアリング四国 経営企画本部 経営企画部 情報システム課長 三宅賢二氏
西日本高速道路エンジニアリング四国 経営企画本部
経営企画部 情報システム課長 三宅賢二氏

SD-WANでシンプルに構築西日本高速道路エンジニアリング四国では、NEXCO西日本グループ企業が共有する「NEXCO西日本グループネットワーク」によって本社とDC、各拠点を接続している。このグループネットワークは自営網と、通信事業者が提供する回線で冗長化されているが、本社/DC等の拠点からのアクセス回線が1本のため、信頼性に課題があった。

三宅氏はネットワークの冗長化を実現するため「本社とDCの区間だけでも、別の物理回線を引いて二重化したい」と考えていた。そこで、新たに本社とDCを結ぶバックアップ回線の導入を決定した(図表)。

図表 西日本高速道路エンジニアリング四国のネットワーク概要[画像をクリックで拡大]
西日本高速道路エンジニアリング四国のネットワーク概要

ただ三宅氏は「当初は、ルーターやスイッチなどの構成を見直して冗長化に取り組もうとした。しかし、いざという時に人の手が必要になってしまうなど、上手く構築できるイメージが湧かなかった」と振り返る。

そこで、WAN Scalerの更新の時期も近づいていたこともあり「Citrix SD-WAN」の導入に踏み切った。これならば、WAN Scalerの装置をSD-WANの装置に置き換えるだけで構成できる。WAN高速化機能も備わっており「一石二鳥と思い採用した」と三宅氏は語る。WAN Scalerの実績からシトリックス社の製品は信用できると感じていたため、他社製品との比較は行わず採用した。

導入時には、約1年前からスケジュールを組み、十分な準備・テスト期間を確保。Citrix SD-WANを導入する場合とそうでない場合で、ファイル転送の時間を最大約10倍に高速化できることが確認できたという。綿密な準備を重ね、約3か月という短期間で大きなトラブルもなくサーバー移行が完了した。

月刊テレコミュニケーション2019年6月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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