基地局とデバイス間で通信するだけでなく、電池駆動式の中継器を用いてマルチホップ通信ができるという、他のLPWA規格にはない独自性が「ZETA」の最大の特徴だ。低コストにメッシュ型のトポロジーが組めることで、通信範囲の広い高信頼なネットワークが実現できる。
このZETAの普及促進を目的とするZETA Allianceが、ワイヤレスジャパンに初出展した。目玉は、エッジコンピューティングを組み込んだ新デバイスだ。
ACCESSが開発したIoTカメラ。撮影した映像を内部でAI解析する
上写真は、ACCESSが開発したIoTカメラ。撮影した映像を内部でAI解析し、人やモノを検知することができる“エッジAI“搭載カメラだ。映像に写った人数のカウントや空席の感知、畜産や害獣管理などの用途を想定しているという。
映像の解析はカメラ内で行い、数値データ等のみをZETAで送信するため通信容量も頻度も少なくて済む。AI処理といえばGPUを使うケースが多いが、このカメラではFPGAを使うことで消費電力を抑制している。説明員によれば、30分に1回の送信であれば単三電池4本で1年間の継続動作が可能だという。
ACCESSはこのほか、「GPSトラッカーZETA版」も展示している。これは、クラウド側からプッシュ型で現在位置を“送らせる”ことが可能なデバイスだ。
GPSトラッカーZETA版。凸版印刷製の通信モジュールを採用している
一般的なIoTでは30分に一度、1時間に一度といったようにトラッカー側から定期的にデータを送信する使い方が多い。だが、移動するモノや人を追跡する場合、モニタリングする側が“いま現在位置を知りたい”と考えるケースも少なくないはずだ。
GPSトラッカーZETA版は、そんなニーズに応えるデバイスだ。双方向通信が得意なZETAの特徴を活かして、遠隔からトラッカーを起動しGPS情報を取得することができる。
組み込み型AIをZETA通信デバイスに搭載
Neusoftも、エッジコンピューティングとAI技術を活用したZETAデバイスを展示している。下写真の青い箱がそれで、数字等を読み取ってその数値データをZETAで通信する。
NeusoftのエッジAIデバイス(左)。黒い部分を水道メーター(中央)の表示部に当てると、
内部のカメラとエッジAIで数値を読み取り、ZETAでデータを送信する
想定しているのは、水道やガスメーター等の検診だ。メーターで数値が表示されている箇所に細長い窓の部分を当てて設置する。デバイス内部のカメラを使って、OCRで数値を読み取る仕組みだ。
Neusoftは組み込みに特化した機械学習、深層学習技術を持ち、数値の読み取りのほか、人数カウントや顔認識、人物追跡など様々な用途にこの仕組みを展開することが可能という。
なお、ACCESSやNeusoftが開発するこれらのデバイスは、凸版印刷が開発、量産化した国産のZETA通信モジュールを搭載している。今後、日本メーカーによるZETAデバイスの開発が加速しそうだ。
マクセルはZETA国産中継器の試作品を展示
マクセルも独自開発のセンサーや中継器の試作品等を展示している。
同社製の円筒形CR電池を搭載し、従来よりも電池寿命を伸ばしたZETA中継器を参考出展。用途に応じて使い分けられる3種類の電池容量をラインナップした。
マクセルは独自開発したZETA中継器の試作品等を展示
このほか、中継ユニットを内蔵した防災計測システムも紹介している。水位計をはじめとする様々な汎用センサーに対応しており、読み取ったデータをZETAで送信。最大4ホップまで中継が可能なため、電源の確保が難しい山間部などでも低コストに広域なセンサーネットワークを構築できる。
また、1時間ごとなど長い間隔でデータを送信する“通常時”と、3分ごとのように短い間隔で送信する“緊急時”を自動的に切り替える機能も搭載することで電池駆動の期間を伸ばすなど、実用面を想定した様々な工夫が凝らされている。
本当に使えるIoTシステムを実現するには、通信技術だけでなく電池に関する技術・知識も不可欠だ。“電池の専門家”にも話が聞けるという意味で、IoTを手がける人にはぜひZETA Allianceブースを訪れてほしい。