企業ネットワーク最前線

“仕事か遊びか”は時代遅れ?

旅先で働く「ワーケーション」という働き方

文◎村上麻里子(編集部) 2019.04.16

  • Teitter
  • facebook
  • 印刷

旅先で遊びながら仕事もする「ワーケーション」が、注目を集めている。東南アジアを旅しながら働く社員や、冬の午前中はスノーボードして過ごす社員……。ワーケーションを実践する2社に話を聞いた。

 
「働き方改革」の名の下、長時間労働の是正やテレワークの導入に取り組む企業が増えているが、さらに一歩進んだ働き方として、「ワーケーション」を導入する動きが一部の企業で出てきた。

ワーケーションとは、「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語だ。旅行先で休暇を楽しみながら、テレワークで仕事をするという新しい働き方を指す。一昔前であれば想像もできなかった働き方が、ネットワークやモバイルデバイス、コミュニケーションツールの進化により実現可能となっている。

ネット上の仮想オフィスに“出社”システム開発会社のソニックガーデンの本社は、東京・自由が丘のマンションの一室にある。

広いリビングを活用したオフィスには若い社員数人がPCに向かっているだけで、閑散としている。それもそのはず。36人(2019年2月時点)いる社員の半数以上は地方在住で、全国16の都道府県に散らばっているからだ。

ソニックガーデンの社員には地方在住者も多く、東京・自由が丘のオフィスで働く人は少ない
ソニックガーデンの社員には地方在住者も多く、東京・自由が丘のオフィスで働く人は少ない



その1人、野本司氏の自宅は兵庫県明石市にある。2017年4月に新卒で入社して以来、在宅勤務を続けており、一度も通勤電車に乗ったことがない。それどころか、入社2年目の昨年は、1年の大半を東南アジアなどでワーケーションをしながら過ごした。1回あたりの旅行期間はまちまちだが、最長で2カ月に及んだこともある。

現在オーストラリアを横断中のある社員は、昼間は車で旅を続け、夜はホテルでPCに向かって仕事をしている。時差の関係もあり、日本のオフィスや取引先とのやり取りに影響はない。基本的に日本のカレンダーに合わせて働いており、週末や祝日は仕事をしないという。

ソニックガーデンの社員の1人、野本司氏は入社以来、兵庫県明石市にある自宅や旅先で仕事をしている
ソニックガーデンの社員の1人、野本司氏は入社以来、兵庫県明石市にある自宅や旅先で仕事をしている



ソニックガーデンでワーケーションが成功している秘訣の1つは、「バーチャルオフィスRemotty」と呼ばれる自社開発ツールにある。

Remottyにアクセスすると、PCのカメラで自動撮影した写真が数分間隔で仲間に共有され、お互いの様子を一目で把握できる。食事や子供の迎えなどで離席する際、「行ってきます」とつぶやく社員もおり、実際のオフィスで一緒に働いているかのような感覚を味わうことができる。Web会議やビジネスチャット、音声会議の機能も搭載しているので、社内および取引先との会議や打ち合わせにも活用している。「基本的に勤務時間中はRemotttyを立ち上げることを義務付けている。インターネット上の仮想オフィスに出社し、仕事が終わったら帰って行くイメージ」と代表取締役社長の倉貫義人氏は説明する。

在宅勤務などテレワーク中の社員とのコミュニケーションにメールやチャットを活用する企業は少なくないが、相手の状況が分からないため、コミュニケーションが疎かになりがちだ。Remottyであればリアルタイムに相手の反応が見えるので安心して話しかけることができ、コミュニケーションが活性化するという。

ソニックガーデンの社員はインターネット上の仮想オフィス「Remotty」に集まり、会議や打ち合わせを行う
ソニックガーデンの社員はインターネット上の
仮想オフィス「Remotty」に集まり、会議や打ち合わせを行う



倉貫氏らが5人で創業したソニックガーデンは、2011年の設立時からリモートワーク・完全フレックス制(コアタイムのないフレックス制)という斬新な働き方を導入していたわけではない。「当時は社員全員がネクタイにスーツ姿で、満員電車に揺られて通勤していた」と振り返る。

作業はクラウドで行うため、客先を訪問する必要がなく、インターネットにつながる環境であればどこでも仕事ができる。そうした事情から、業容拡大とともに地方在住者の採用が増えていった。設立2年目にはRemottyが実用化され、「出社しなくても大丈夫」とのコンセンサスが社内で暗黙のうちに出来上がり、やがて現在の働き方に至ったという。

「物理的なオフィスに出社する必要がないのであれば、どこにいても一緒」という“逆転の発想”から、長野県に移住する社員も現れた。「もっとスノーボードを楽しみたい」というのが理由で、冬の間は午前中がスノーボード、午後は仕事という生活を続けている。

ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫義人氏
ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫義人氏



こうした自由な働き方をする上で、誰がどのように管理をするのか疑問に思うかもしれない。

実は、ソニックガーデンは管理職を置かないフラットな組織構造だ。上司はおらず、ノルマや売上目標も一切なく、評価制度もない。その代わり、給与は一定の年齢以上は一律で、賞与も全員に均等に配分する。だからといってフリーランスのように自ら営業して仕事を見つける必要はなく、会社のお問い合わせ窓口に寄せられた案件から、内容に合わせて適任者に割り振られる。

いわば、フリーランスと社員の“いいとこ取り”といった働き方だが、社員1人ひとりが自律的に働く「セルフマネジメント」の意識が徹底しているからこそ可能だという。例えば、勤務時間も特に決まりはないが、お互いにコミュニケーションを取りやすい昼間に、全員がRemottyに“出社”するようにしている。

自律的な働き方の発展形として、倉貫氏は「仕事そのものを楽しみ、傍から見て遊んでいるのか仕事をしているのか分からない状態を目指したい」という。
続きのページは「business network.jp」の会員の方のみに閲覧していただけます。ぜひ無料登録してご覧ください。また、すでに会員登録されている方はログインしてください。

  • Teitter
  • facebook
  • 印刷

スペシャルトピックスPR

nvidia21072
kyocera2107
rohde2107

>> 今月の月刊テレコミュニケーション

月刊テレコミュニケーション【特集】もう知らないではすまされない
           
宇宙通信と量子通信で変わる未来

<第一部:宇宙通信>衛星通信はこれからどうなる/ NTTが宇宙に行く理由/ソフトバンクの“非地上”作戦/JAXA、光衛星間通信の狙い <第二部:量子通信>量子暗号で世界をリード/量子インターネットの可能性

インタビューJTOWER 代表取締役社長 田中敦史氏「キャリア投資の1割がまず目標 海外大手とも戦っていける」【ソリューション特集】マルチベンダー時代のテスターの選び方/DDoS攻撃対策 【ビジネス最前線】東大・中尾教授がローカル5Gベンチャー ほか

>>詳しい目次を見る

スペシャルトピックス

アイティフォーAI型EDRが侵入“後”の対応を
高速・低コストに

数週間かかる「フォレンジック」が最短3時間!

東陽テクニカあらゆる400ギガネットワーク環境をテスト

BGPの負荷試験等幅広いプロトコルテストに対応!

ネットスカウトシステムズネットスカウトシステムズが指南!
DDoS攻撃の効果的な防御方法とは

世界的に急増するDDoS攻撃。被害を最小限に食い止める方法を解説する

インテル「5G・6Gでキャリアとともにイノベーションを起こす」インテル堀田氏

ワイヤレスジャパン2021での基調講演を徹底レポート!

VMwareデータセンター内通信を「ゼロトラスト化」するには?

データセンタートラフィックの8割を占めるEast-West通信の守り方を解説

VMware SASE脱プロキシもVMware SASEで簡単

クラウドから1画面でネットワークとセキュリティ管理、そしてゼロトラスト実現へ

NVIDIA AI DAYSエヌビディア・ドコモ・富士通が
見据える「5G RANの将来」

AI時代に起こる5G RANの進化についてキーパーソンたちが語った。

NVIDIA AI DAYSソフトバンク、ドコモの5G・MECを支える技術とは

「AI-on-5G」の実現に向けて取り組むソフトバンクとNTTドコモ。

京セラ5G/L5GをデュアルSIMで使い倒す!
映像伝送、DX、電波調査がこれ1台

ローカル5Gにも対応した京セラの5Gモバイルルーターが好評だ。

ローデ・シュワルツ・ジャパンローカル5Gのテスト品質は業界トップ
サポート人員を3倍、コストも低減

ローデ・シュワルツがローカル5Gの導入を手厚く支援する。

DNPローカル5Gを支える国産SIMカード
多様なプレイヤーをコンサル力で支援

大日本印刷(DNP)がローカル5Gに最適化させたSIMを提供!

構造計画研究所ローカル5Gの円滑な導入に貢献する
2つの電波シミュレーションツール

ローカル5Gの免許申請に必要な「カバーエリア図」作成を大幅効率化!

APRESIA Systemsローカル5Gに最適化した性能
導入コストは億単位から数千万へ

ローカル5Gの導入コストを数千万円台に引き下げるAPRESIA Systems

ミクシィ低遅延伝送に挑んだミクシィ、IP映像伝送の最新規格SMPTE 2110で

ミクシィのサービス「TIPSTAR」は、低遅延のIP映像伝送技術を駆使!

キーサイト・テクノロジー5G/ローカル5G/O-RAN/C-V2Xの
最前線を解説する技術イベント

7月7日(水)・8日(木)にオンライン開催!

ジュニパーネットワークス大企業が「無線LAN」をリプレース
正解はクラウド型かオンプレ型か?

今、大規模な無線LANもクラウド管理型が最適な時代に!

VMware未知の脅威から身を守る
最新のNDRが持つ実力とは

元Lastline、現VMwareセキュリティエバンジェリスト橋本氏が徹底解説

アライドテレシス高速NWはローカル5Gでなくても!
キャリア5G×Wi-Fi 6という現実解

ローカル5Gより価格を大幅に抑えられるアライドテレシスの提案とは?

NVIDIA GTC21世界最大級のAIカンファレンス
NVIDIA GTC21で明かされた新技術

基調講演と5つのテレコム関連のお勧めセッションを紹介する。

ハイテクインター4Kも無線でリアルタイム伝送
5Gで現場の映像活用を加速せよ!

5G/ローカル5G映像伝送システムがハイテクインターからいち早く!

Nuclias CloudWi-Fi 6 APからL2スイッチまで
リモートから簡単操作で運用管理

ネットワーク機器のリモート管理機能、使いやすさ重視で選ぶなら?

マクニカ先進4社はネットワークのオープン化で何を得たか?

IIJ、ヤフー、KADOKAWA、ブロードバンドタワーに学ぶ理由と成果

アライドテレシスNWの中心はLANからWANへ
学校に見る、次世代WANの作り方

次世代WANの在り方について学校を例にアライドテレシスが解説する。

VMware SD-WAN by VeloCloud旭化成がSD-WANを
国内340カ所に導入する理由

旭化成はVMware SD-WAN by VeloCloudへの切り替えを開始した。

GlobalMeetウェブキャストウェビナーツールの新・選択肢!

セミナーや決算発表も今やオンライン! ソフトバンクならウェビナー初心者から経験者まで満足できる。

日本シエナコミュニケーションズ OTTで始まったDCI次世代トレンド 鍵は「身近になったROADM」

今、データセンター間接続(DCI)の最前線で何が起こっているのか。

VMware NSX Advanced Load BalancerDX推進の大きな障壁に!
従来型ロードバランサーの課題とは

C/Dプレーン分離で完全ソフトウェア型のヴイエムウェアは全く違う!

VMwareVMwareが見据えるネットワーク業界の未来

国内SDN市場シェア75%超のヴイエムウェアが目指すネットワークとは

ホワイトペーパー
ネットワーク解放宣言
ローカル5G情報局

アクセスランキング

tc202012

「通信」の力でビジネスを進化させるbusinessnetwork.jp

Copyright(c) 2020 RIC TELECOM Co.,Ltd. All Rights Reserved. 記事の無断転載を禁じます
当ウェブサイトはCookieを使用しています。閲覧を続ける場合、プライバシーポリシーに同意したことになります。