企業ネットワーク最前線

エリクソンの構造改革「既存LTE帯域の5G化に商機がある」

文◎藤井宏治(IT通信ジャーナリスト) 2018.12.26

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2017年に大幅な赤字を計上したエリクソンの業績が回復基調に入ってきた。2018年第1四半期(1~3月)の粗利益率は前年同期の18.7%から35.9%に上昇。直近の第3四半期(6~9月)でも36.9%を確保、純利益も黒字化を果たした。

エリクソン・ジャパンで代表取締役社長を務める野崎哲氏は「2017年1月にCEOに就任したボリエ・エクホルムが3月に打ち出した “フォーカスト・ビジネス・ストラテジー” (事業の選択・集中戦略)の成果が見えてきた」と語る。

LTEへの投資が一巡、モバイルインフラ市場が縮小に転じる中、エリクソンはエンタープライズ向けなど「やや広がり過ぎていた」事業ポートフォリオを整理。経営資源を本業であるネットワークインフラビジネス、特に5Gやクラウド関連事業に集中する方針を打ち出した。これに伴い2017年の売上高は1割減少、純利益ベースで351億クローネ(44億ドル)の損失を計上している。2018年に入ってこの改革の成果が出てきたのだ。

「2017年は30%に届かなかった粗利益率が、2018年は36~37%ほどに上がってきた。5Gが本格化するまで、少しずつ縮小していくと見られるモバイルインフラ市場の中で利益を出せる体質になった」と野崎氏。

さらに「単にコストを削減するだけでは縮小均衡に陥ってしまうが、この施策では本業分野の研究開発投資を積み増し、コストの引き下げと同時に競争力を向上させることを狙った。成長に向け新たな一歩を踏み出せる段階にきたと考えている」と言う。

実は、3Q決算では売上も前期に比べ約5%の増加に転じている。特に北米が大きく伸びたという。

売上増の要因の1つに「5G対応基地局」の販売が好調に推移していることがある。

エリクソンは現在、5G用の基地局製品として大きく①日本の3.7GHz帯/4.5GHz帯など6GHzより下の「ミドルバンド用」、②日本では28GHz帯が割り当てられる「ミリ波帯用」の2種類の製品をラインナップしている。

エリクソン・ジャパンのもう1人の代表取締役社長であるマイケル・エリクソン氏は、この中で①のミドルバンド向け基地局装置については、「すでにビジネスが始まっている」と語る。

「2015年以降に出荷された基地局装置は4Gと5Gの双方に対応できる。トラフィックの増大に対処するために4G(LTE)のネットワークを増強することが5Gの準備にもなる」

さらに「初期にLTEを導入した日本や韓国、米国の通信事業者の基地局は導入後10年くらいになる。NB-IoT/Cat.M1など、こうした基地局では対応できない新サービスを導入するために更新を行う動きも広がってきている」とのことだ。

特に注目されるのが、米国の動きだ。T-モバイルとスプリントは、2019年にそれぞれLTEで利用している600MHz帯、2.5GHz帯で5Gを展開する計画を明らかにしている。エリクソンはT-モバイルの600MHz帯、スプリントの2.5GHz帯の双方にLTE基地局を納入しており、これらは5Gでも利用される。

特にエリクソンの基地局装置は、「4Gと5Gを混在させてトラフィックの状況をモニターしながら、2つの帯域幅を自動的に調整できる」機能を持っており、4Gから5Gへの移行を円滑に進められるという。これがエリクソンの米国でのビジネスの伸びを支えているのだ。

では、日本でもこうした展開は期待できるのか――。

野崎氏は「日本では総務省が5Gを地方創生の手段として位置づけ、地方でも5Gが利用できる環境を整えようとしている。こうした展開を進めるには、現在LTEで用いられている電波の飛びがいい、低い周波数を5Gで利用することが不可欠。制度整備に一定の時間が必要になるだろうが、2021~2022年頃から徐々に4Gの帯域を5Gで利用する流れが出てくるのではないか」と見る。こうした展開を進めば、日本でも大きな商機が生まれるはずだ。

ところで、日本での5Gビジネスの直近のターゲットとなるのが、2019年夏以降のプレサービス、そして2020年の商用サービスに向けた3.7/4.5GHz帯、28GHz帯の基地局の商戦だ。

マイケル・エリクソン氏は「現在、4Gで取引をいただいている大手3社に5Gを納入するのが、我々のミッション」と語る。

5Gに向けた地保固めを終えたエリクソンだが、ここに来て不安要因も出てきた。12月6日にエリクソンのモビリティ管理装置(MME)のトラブルにより、ソフトバンクで大規模な通信障害が発生したことだ。原因はソフトウェア証明書の期限切れという初歩的なもので、障害はイギリスのO2など同じソフトを利用していた多くの通信事業者にも広がった。

エリクソンが推進してきた構造改革の中で、基本的な業務が軽視されていた可能性はないのか。5Gビジネスの本格化を前に、エリクソンはトラブルの原因究明だけでなく、業務体制自体の検証を迫られている。

(左から)エリクソン・ジャパン 代表取締役社長のマイケル・エリクソン氏と野崎哲氏
(左から)エリクソン・ジャパン 代表取締役社長のマイケル・エリクソン氏と野崎哲氏

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