企業ネットワーク最前線

対応急がれる「ISDN/PHSマイグレーション」の正解は?

文◎村上麻里子(編集部) 2018.12.18

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ISDN/PHSからIP網へのマイグレーションにコストをかけたくない企業は多い。そこで注目が集まっているのが、既存の端末や設備を活かせ、通信コスト削減などのメリットもある移行ソリューションだ。

 
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、そして楽天の携帯キャリア4社は2019~2020年にかけて、5Gサービスを相次いでスタートする。通信は常に技術革新を繰り返す新陳代謝の激しい世界だが、5Gの登場とほぼ時期を同じくして、かつて一世を風靡した通信規格が表舞台から姿を消す。

モバイルでは、ソフトバンクが2020年7月、法人向けのテレメタリングを除くPHSの全サービスを終了する。具体的な時期は明らかにされていないが、テレメタリングについても遠くない将来、サービス提供が終わると見られる。一方、有線では固定電話のIP網への移行に伴い、NTT東日本/西日本はISDN「INSネット ディジタル通信モード」を2024年1月に終了する。

INSネットの契約数は、NTT東西合わせて約210万回線(2018年6月末時点)。このうち約9割が法人ユーザーとなっている。

「広いカバーエリア」「帯域保証型」「低コスト」「短い開通期間」といった特徴から、銀行のATM、POS(販売情報管理システム)、CAT(信用照会端末)、EDI(電子商取引)、企業のEB(電子バンキング)、監視カメラの映像通信などに活用され、重要データの送受信に使われているケースも多い。

IP網への移行が遅れれば、事業そのものや、場合によっては企業経営にも影響を及ぼしかねない。システムの更改時期などのタイミングも考慮し、NTT東西では迅速な移行を推奨しており、そのために様々なマイグレーション方法を提案している。

一長一短のISDN代替策ISDNの有力な代替策の1つに、光回線「フレッツ光」への移行がある。

光回線は最大100Mbps~1Gbpsの高速通信が可能で、大容量データの送受信にも適する。その安定性から、NTT東西はPOSやCAT、EDIの移行策として推奨しているが、ベストエフォート型のため、利用状況によって通信速度が変化するという課題もある。

一方、IP電話サービス「ひかり電話」を活用したデータ通信サービス「データコネクト」は帯域保証型なので、フレッツ光などのベストエフォート型よりも低遅延・低データ損失で通信することが可能。利用帯域によって料金は異なるが、64kbpsまでの場合、30秒あたり1円とINSネットと比べて安価だ。しかし、データをやり取りする双方がひかり電話に加入し、専用機器やアダプターを用意する必要がある。

このほか、IP-VPNサービスによる移行もある。

NTT東日本の「フレッツ・VPNプライオ」は、ベストエフォート通信に加え、優先的にパケットを転送する帯域優先機能も備えている。ただ、データコネクトと同様、送受信者の双方が同サービスを契約していないと、優先制御機能を利用することはできない。また、月額利用料金もISDNより大幅に高くなってしまう。

そもそもデータコネクトやIP-VPNでISDNをIP網に移行した場合、従来のISDN端末はそのまま利用できないため、端末を更改する必要がある。また、いずれも光回線を別途契約しなければならず、光回線が敷設されていないエリアでは利用できない。

このように、固定通信によるISDNの代替にはいずれも一長一短があり、ISDNの特徴すべてを網羅したサービスは現状では存在しないのが実状だ。

そこでNTT東西は補完策として、メタルIP電話上でのデータ通信を提供する(図表1)。IP網への移行後も既存のメタルケーブルを利用し、端末もISDN端末をそのまま使うことが可能だ。ただし、INSネット ディジタル通信モードとはまったく同一の品質とはならないうえ、2027年頃までの限定的な提供にとどまることを考慮する必要がある。

こうした状況を踏まえ、NTT東では「業界ごとに推奨されている方式も鑑みて、案件ごとに適したマイグレーションを提案するようにしている。モバイルも選択肢の1つ」という立場を取る。

 

図表1 「メタルIP電話上のデータ通信」(補完策)の概要
図表1 「メタルIP電話上のデータ通信」(補完策)の概要


変換アダプターやIoTルーターによる3G/LTEへのマイグレーションを実現する代表的な製品には、セイコーソリューションズの「CA-7100シリーズ」や日本制禦機器の「Dataway NEXT」などがある。

これらはいずれも、センター側や接続する拠点側にアダプターを設置するだけで、IP網への置き換えが完了するというものだ。簡単かつスピーディなマイグレーションが可能なうえ、既存の設備や端末はそのまま使い続けることができるので、コスト削減にもつながるとして、注目が高まっている。

ISDNは、例えば「INSネット64」であれば、最大64kbpsの2回線、同16kbpsの1回線というように同時に複数の通話・通信を行うことができる。この特徴を活かし、ヤマハでは自社のルーターを使い、拠点間のデータ通信のバックアップ回線と電話にISDNの活用を推奨してきた。

そのバックアップ用のISDNに適したマイグレーション方法として、同社は3G/LTE内蔵VoIPルーター「NVR700W」によるモバイル回線への移行を提案している。

ヤマハの3G/LTE内蔵VoIPルーター「NVR700W」は、小型ONUを挿すことで、1台で光回線に接続できる
ヤマハの3G/LTE内蔵VoIPルーター「NVR700W」は、
小型ONUを挿すことで、1台で光回線に接続できる



NVR700WはISDNポートの代わりに本体にONUポートを装備しており、小型ONUを挿すことで、据置型のONUを別途設置する必要なく1台で光回線に接続できる。

マイグレーション後のシステム構成としては、データ通信の場合、主回線の光は変更せず、バックアップ回線を3G/LTEに変更することで以前と同じように冗長化を実現する。さらに、ISDNにはない利点として、NTTドコモおよびMVNOのSIMカードをSIMスロットに内蔵できるので、目的や用途に合わせて多様なプランから選択することが可能だ。

一方、電話のマイグレーションの場合、固定電話網の主回線をひかり電話、主要拠点間の副回線は光回線によるIP電話のままで、その他の拠点間の副回線に3G/LTEを用いる構成にすると、データ回線とVoIPによる無料内線電話を同時に利用することができる。

モバイルをバックアップ回線として利用するメリットには、プランの豊富さや低額での利用、物理的な冗長化の他に、障害対策やBCP対策としての側面もある。

「企業や自治体の中には、非常用の回線や電話を別途用意しているところもあるが、いざというときに混乱してしまい、上手く使えないことが多い。日頃から内線電話として使い慣れておけば、非常時でも安心して使いこなすことができる」とヤマハ 音響事業本部 事業統括部 SN事業推進部 国内営業グループ主事の細江誠一郎氏は話す。
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