キーパーソンが語る

「Wi-SUN FANが海外で人気。LPWA世界第3位へ」、原田博司京大教授インタビュー

聞き手◎太田智晴(編集部) 2018.02.05

  • bookmark
  • Teitter
  • 印刷

京都大学教授
Wi-SUNアライアンス共同創業者
原田博司氏

全国の電力会社のスマートメーターに採用されている“日本発”のIoT向け無線「Wi-SUN」。あまり知られていないが、海外でも最近、Wi-SUNの採用が加速している。なかでも脚光を浴びているのが、“Wi-SUN版LPWA”といえる「Wi-SUN FAN」だ。なぜ、Wi-SUNはグローバルでも成功の階段を上り始めたのか。Wi-SUNの生みの親である原田博司教授に直撃した。

 
――IoTに注目が集まるなか、様々なLPWAの方式が登場し、マーケットを盛り上げていますが、この現状をどう見ていますか。

原田 いろいろな方式が出てくることは悪い話ではないのですが、なかなか“理想”と“現実”がかみ合っていないとは思っています。実証実験は多く行われていますが、商用化され、ビジネスになっているケースはあまりありません。

なぜ、このような現状になっているのか。理由をしっかりサーベイし、IoTが次に進むべき道を予測できているかというと、十分とは言えないのではないでしょうか。

――あまり深く考えていない人が多いということですか。

原田 長期的な視点で、ビジネスを計画しきれていない気がするのです。

携帯電話の世代が10年ごとに変わってきたように、通信システムの実用化、商用化は10年が基本です。まず絶対に10年はじっくりと取り組む必要があります。Wi-Fiにしても1999年に始まり、18年掛かって、ここまで来ました。LPWAだけが、3年で済むということはありません。

また、今まで成功した通信システムは、すべて1000万台以上のユーザーがいる市場がベースになっています。なぜなら、日本のメーカーは1000万台以上のデバイスが出始めて、初めて「ビジネス」だと考えるからです。

国内で1000万台以上というと、携帯電話が1億台以上、自動車がおよそ5000万台、ゲームが数千万台です。「コンシューマー用の“モノ”に無線機を付ける」といった話は一見華やかに見えるのですが、大体これらに絡まないと1000万台には届きません。現在のIoTの実証はこのような“目先だけの”“見た目のよいもの”が多く、そのため残念ながら、根のあるビジネスとはならないのです。

――「過去の歴史に学んでいない」というわけですか。

原田 そうです。私が2012年に創業者としてWi-SUNを立ち上げる際は、1000万台導入できる市場からスタートしないと絶対に成功しないと考えました。

では、1000万台のユーザーを必ず確保できる市場はどこにあるのか。最初はコンシューマーではなくインフラのほうが手堅いと、目を付けたのがスマートメーターでした。スマートメーターの市場がどれくらいあるかというと、東京電力管内だけで約2700万台です。しかも、8~10年周期で必ず交換需要が発生するので、安定的なビジネスが成り立ちます。

これだけの市場規模があると、大手メーカーが最初から動き始めます。Wi-SUNの場合、テキサス・インスツルメンツ、ラピスセミコンダクタ、アナログ・デバイセズ、シリコンラボの4社が当初からチップを供給しました。複数のチップベンダーによる競争がなければ、コストは安くなりません。また、2700万台のスマートメーターを1社で作ることはないですから、相互接続が絶対に必要になります。異なるメーカーの製品が相互接続できるようになると、ビジネスに広がりが出てきます。

さらに、スマートメーターには、99.5%以上の接続率という高信頼性が求められます。この要件を満たせれば、まずコンシューマー用で問題が出ることはありません。

スマートメーターで成功すれば、基盤となるビジネスモデルを確立できるため、Wi-SUNはまずこの市場を狙ったのです。“あらゆるモノをつなぐ”では結局何もできません。やはり、得意な領域があって、そこから発展させていくことが必要です。
続きのページは「business network.jp」の会員の方のみに閲覧していただけます。ぜひ無料登録してご覧ください。また、すでに会員登録されている方はログインしてください。

著者プロフィール

原田博司(はらだ・ひろし)氏

1995年、現在の情報通信研究機構(NICT)である郵政省通信総合研究所に入所し、2011年にNICTスマートワイヤレス研究室室長。2014年から京都大学大学院 情報学研究科 通信情報システム専攻教授(現任)。Wi-SUNアライアンスの共同創業者・理事会共同議長(Board co-chair)であるほか、米IEEE802.15.4g標準化委員会副議長も務める。文部科学大臣表彰 科学技術賞、内閣府 産学官連携功労者表彰 総務大臣賞など受賞歴多数。工学博士

スペシャルトピックスPR

1912_hcn
1912_has
1912_thales

>> 今月の月刊テレコミュニケーション

月刊テレコミュニケーション【特集】ネットワーク未来予想図2020
[Part1]3段階で進化する5G [Part2]ローカル5G急発進の可能性 [Part3]Wi-Fi 6の普及はハイペース [Part4]「飛び過ぎない」Li-Fiで通信 [Part5]LPWAは大規模導入期に [Part6]ドローンの携帯電波利用が解禁 [Part7]高まる有線IoTの存在感 [Part8]量子時代は暗号通信も進化

[インタビュー] NTT 取締役 研究企画部門長 川添雄彦氏「インターネットを超えるIOWN」 [ソリューション特集]学校ネットワーク/クラウド閉域接続 [ビジネス最前線]NTTコム、ローカル5G参入の狙い ほか

>>詳しい目次を見る

ホワイトペーパー

スペシャルトピックス

住友商事マシネックスついにオラクルがSD-WANに参入!
 クラウド接続に最適な高品質NW

Oracle Failsafe SD-WANは、ネットワーク品質を劇的に変化させる。

APRESIA Systemsローカル5G参入を強力サポート

APRESIA Systemsの「ローカル5Gシステム」はローカル5Gに必要な機能に絞り込み、導入を強力サポート

NECプラットフォームズ教育用ネットワークをトータル提案
IPv6活用でコスト削減・高速化

快適な校内無線LANには、VPNなど校外NWの整備も必要だ!

アット東京AWSやGCPなどメガクラウドに
直結する新時代のデータセンター

アット東京のデータセンターは“つなぐ”価値に磨きをかける!

ヤマハ仮想NWを始めるならヤマハで!

ヤマハの仮想ルーター「vRX」なら、これまでのノウハウをクラウドでも活かせる。

日本ソルテック学校ネットワークを簡単・安価に

日本ソルテックのクラウド管理型無線LANは、専門学校、介護施設を中心に豊富な導入実績!

シスコシステムズ世界で選ばれているオンライン会議
簡単にワンクリックで会議に参加!

Cisco Webexは社内外、誰とでも高品質なオンライン会議が行える。

エイチ・シー・ネットワークス株式会社ネットワークに迫る人手不足の危機
遠隔監視と予防保全で乗り越えろ!

光ファイバの保守現場の深刻な技術者不足。日立金属はどう対応した?

ハイ・アベイラビリティ・システムズ「全て」を一括認証できるSSO
簡単導入でパスワード管理から解放

AccessMatrix USOなら導入や運用も容易にシングルサインオンを実現!

ジェムアルト株式会社マルチクラウド時代の情シスを救う
認証プラットフォーム!

認証・特権ID管理をきめ細やかに! 自社サービスとしても展開可能。

ZscalerDX加速させるクラウドセキュリティ
「100ms以下」の遅延で快適利用

Zscalerの革新的アーキテクチャで働き方改革を強力推進!

パロアルトネットワークスパブリッククラウド基盤の
セキュリティ対策はどうする?

開発のライフサイクル全体でリソースを保護する「Prisma Cloud」

ヤマトロジスティクスキャッシュレス化に乗り遅れるな!
決済端末の導入・運用を一括代行

キャッシュレス決済の導入をヤマトロジスティクスがトータル支援!

アクセスランキング

dwpreport
tc_banner191122

「通信」の力でビジネスを進化させるbusinessnetwork.jp

Copyright(c) 2019 RIC TELECOM Co.,Ltd. All Rights Reserved. 記事の無断転載を禁じます