74%のユーザー企業は5G(第5世代移動通信システム)に対して、4Gより多くの金額を費やしてもよいと考えている――。
これは、8月9日に米ガートナーが発表したグローバル調査結果の一部だ。企業・組織に所属する約200人を対象とした調査で、5Gに対する高い期待が窺える。
日本では2020年の実用化に向けて通信事業者が5Gの準備を進めており、ユーザーの認知度も徐々に高まりつつある。だが、特に企業ユーザーが5Gをどのように捉えているのかは、なかなか見えてこないのが実情だ。本調査の対象には残念ながら日本は含まれていないが(北米:55%、欧州・中東:32%、その他:13%)、それを読み解くヒントになりそうだ。
ガートナー ジャパンのリサーチ部門でテクノロジ&サービス・プロバイダー CSPテクノロジ リサーチディレクターを務める瀧石浩生氏の解説で、その結果を読み解いてみよう。
5GはIoT通信に使う1つめは、ユーザーの期待の高さを物語るデータだ。
「5Gはいつごろ広域に使えるようになると期待しているか」という設問への回答は、2018年が27%、2019年が23%、2020年が29%だった。2017年と回答した5%を含めて、84%が2020年までの「5G実用化」を期待している。瀧石氏は、「回答者が5Gをどこまで正確に理解しているかは不明」としながらも、「ユーザーは早く使いたいと考えている。期待しているからこその結果だ」と話す。
では、ユーザーは5Gを何に使おうと考えているのか。
想定用途について最も回答が多かったのは「IoT Communication」で57%。以下、「Video」(4K/8Kビデオストリームやビデオ会議)が50%、「Fixed Wireless Access(FWA)」が49%で続く。図表1でわかる通り、4位以下とは差が付いており、この3つの用途への期待が高い。
なお、3位のFWAは、AT&Tとベライゾンが固定アクセスの代替として5Gサービスを展開しようとしている米国ならではのニーズと言えるだろう。
図表1 ユーザー企業が考える5Gの想定用途
「IoT向け通信」がトップになったことについて瀧石氏は、現状の通信サービスへの不満が背景にあると見ている。
「IoTにトライした結果、現状のLTEやWi-Fi等では不十分であり、これまでにない通信サービスが必要だという認識が広がったのだろう」
なお、この結果は純粋に5Gに対する期待だけでなく、LTE-MやNB-IoTといったLPWA(Low Power Wide Area)への期待が含まれていると考えることもできるだろう。