多様化の時代の働き方を考える(第1回)なぜワークスタイル変革が求められるのか

ワークスタイル変革は今や、日本企業が取り組むべき重要課題となったが、スタート時点から躓く企業も少なくない。成功例・失敗例ともに参考とすべきケースは多くあるが、その分かれ道はどこにあるのか。多くのワークスタイル変革事例に携わった小国幸司氏に、数回に分けて成功の秘訣を解説してもらう。(編集部)

これまで約15年、日本マイクロソフトに所属し、メールやコラボレーションなどの「生産性向上」関連製品を軸にしたソリューションの提案や、パートナー企業の皆様のソリューションビジネス開発のお手伝い、そしてビジネス向けコミュニケーションブランドの製品マネージャーと、いくつかの役割を通じて日本国内の様々な企業の方々とお話する機会を得てきました。

同時に、世界各国の様々な活動に触れることで、ただの文化だけでは無い日本との「違い」も肌で感じながら、実例を多数学ぶことができました。

こうした経験を通じ、多くの社内変革例に触れられたことで、成功と失敗の「分かれ道」の一端を感じられたように思います。今回から始まるこの連載が、ワークスタイル変革やコミュニケーション変革のヒントとなる機会となれば嬉しく思います。

なぜ「働き方変革」なのか「ワークスタイル変革」「働き方変革」は数年前から、ビジネスの現場におけるキーワードとして継続して話題となっています。なぜここまで日本企業の方々が気にされているのか。まず、その背景を整理します。

はじめに「市場環境・構造」の変化があります。

日本の人口減少や人口構造の変化、労働力人口の減少など、社会の「構造的な変化」については、すでに様々な場面・視点から語られています。実際に、昨年10月の国勢調査では、大正9年の調査開始以来初めて人口減少となりました(図表1)。

図表1 人口及び人口増減率の推移(大正9年~平成27年)
図表1 人口及び人口増減率の推移(大正9年~平成27年)

労働力人口についても、いくつかのシナリオはありますが、図表2に示した雇用政策研究会報告書では、2030年には2012年比で800万人以上も減少すると予測されています。これは、大阪府の人口が丸々労働力として無くなってしまうことを意味します。

図表2 労働力の減少
図表2 労働力の減少

課題に応える意味で、個人やチームの生産性を最大限に高めることが求められています。しかし、残念ながら日本の労働生産性の指標は約20年に渡って先進諸国で最下位、OECD加盟国の中でも低いと言われている現状があります(図表3)。

図表3 低い日本の労働生産性
図表3 低い日本の労働生産性

また、人口構造の変化も影響します。今や国民の4人に1人が65歳以上であり、2050年には3人に1人と、さらに高齢化が進みます。働く人が多く集まる東京都が発表したデータでは、2025年には4人に1人が要介護または要支援となるなど、これまで経験したことのない規模の介護社会が到来すると推測されています。

団塊世代が高齢層に差し掛かり、働き盛りで人口も多い40代の団塊ジュニア世代が、ある日突然介護との両立を求められたり、離職せざるを得なくなるといった、構造変化に伴う潜在的なリスクも増加しています。

こうした変化への対応を組織横断的に検討することが必要となっていることが1つ目のポイントです。

月刊テレコミュニケーション2016年7月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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小国幸司(おくに・こうじ)

UNIXのシステム開発(SE)、外資の日本法人立ち上げの市場開発・営業の支援を経て、直近約15年は日本マイクロソフトに所属。2016年に同社を退職し、現在は様々な業種・業態の企業や自治体関連の各種プロジェクトのプランニングやマーケティング支援などのコンサルティング活動を中心に幅の広い活動を行っている

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