光ファイバで電力を送る「光給電システム」とは?

古河電工が光ファイバで電力を供給する「光給電システム」を製品化した。通信事業者や自治体、社会インフラ企業などに対し、電源設備が不要な防災用センサネットワークの提案に力を入れる。

光ファイバ国内最大手の古河電気工業が、光ファイバケーブルで電力を供給できる「光給電システム」を開発した。LANメタルケーブルにおけるPoEのように、光ファイバのみで給電とデータ転送が行えるものだ。

この仕組みを使った初の商用製品として「光給電カメラシステム」を2014年春にリリースした。アクセスネットワーク部技術グループ・グループリーダーの山下鉄広氏は、「遠隔地の監視に便利で、特に屋外で力を発揮する」と話す。

光給電カメラ(手前)と、光給電カメラ用センター装置
光給電カメラ(手前)と、光給電カメラ用センター装置

また、カメラ以外にも様々なセンサ機器に光ファイバで給電できるようになることで、河川の氾濫や道路の浸水等を監視する防災ネットワークを低コストに構築する道も拓ける。同社では、多様なビジネス展開を視野に入れている。

古河電気工業 山下鉄広氏
古河電気工業 ファイテル製品事業部門 アクセスネットワーク部 技術グループ グループリーダー 山下鉄広氏

光ファイバで10km先へ給電

光給電カメラシステムの構成はシンプルだ。電力を光に変換して送るセンター装置と、この「給電光」を受けて貯めた電力で画像を撮影し、データをセンター装置に送り返すカメラで構成される(図表1)。センター装置にDC電源をつなぎ、2芯の光ファイバでカメラと接続。1 芯を電源供給に、もう1芯を画像データの伝送に使い分ける仕組みだ。

図表1 光給電カメラシステムの構成例
光給電カメラシステムの構成例

利点は、監視カメラの設置ポイントに電源設備が要らないこと。「通信用に敷設された既存の光ファイバ(SM型に限る)網で利用でき、最大10kmまで給電できる」能力を持つ。PoEの給電距離は通常100mだ。

もう1つの利点は、災害への耐性が高いことだ。監視するポイントとセンターを光ファイバでつなぐため、その間は電気的に絶縁された状態となり、落雷や電磁誘導、ノイズの影響を受けにくい。

こうしたメリットがある反面、一般的な監視カメラに比べると弱点もある。給電光を強くしすぎると光ファイバが焼き切れる恐れがあるため、危険がなく安定的に利用するには少量の電力しか供給できないのだ(現在の仕様は出力400mW)。

そこで、カメラ側で電力を一定量まで貯めてから撮像してデータを送ることを繰り返す仕組みとしている。撮像の間隔は、給電距離とロスの大きさによるが、1秒~3秒程度という。

したがって滑らかな映像を得ることはできず、静止画のコマ送りになる。また、レンズの向きを変えたりズームをすることもできない。山下氏は「既設の光ファイバで使えて、追加の電源工事やメンテナンスが不要というメリットを活かして、間欠的な映像で監視を行う場面に提案していきたい」と話す。すでに国土交通省が砂防ダムの監視に採用しているほか、通常の監視カメラのバックアップ用に導入を検討している例もあるという。

月刊テレコミュニケーション2014年10月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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