【アステラス製薬】Androidタブレット3000台導入でインパクトのあるプレゼン実現

製薬会社のMRの仕事は外勤が多く、多忙を極める。アステラス製薬ではAndroidタブレットを導入し、インパクトのある製品説明と外出先での業務遂行を可能にした。

2005年に山之内製薬と藤沢薬品工業の合併により誕生したアステラス製薬(東京都中央区)は、泌尿器、免疫疾患および感染症、がん、精神・神経疾患をはじめ5つの領域に注力する、国内第2位の製薬メーカーだ。

同社は全国159カ所に営業拠点を持ち、約2400人の医療情報担当者(MR)を擁する。今年4月、そのMRを中心にNTTドコモのAndroidタブレット「GALAXY Tab 10.1 LTE」を約3000台導入した。

MRは、医師などの医療従事者に対する医薬品の情報提供活動を主な仕事とする。具体的には、医師の診療時間外に医薬品に関する説明(ディテール)をしたり、製品説明会を開く。特に大学病院など大病院の医師にはより専門性の高い情報を提供するため、入念な準備が必要になる。また、地方で活動するMRの場合、外勤が主体で営業所にほとんどいないことも珍しくない。

加えて、カバーする疾患領域は幅広く、取り扱っている医薬品の数も他社と比べて多い。必然的に、利用すべき情報も膨大なものとなる。

「MRが提供する情報の質と量を担保していくことは、営業部門のみならずIT部門としても課題になっている」と、コーポレートIT部S&Mグループ課長代理の山内英樹氏は話す。

同社のタブレット導入の目的の1つが、「インパクトのあるディテール」の実現だ。従来、MRは紙の資材とPCによるプレゼンを行っていた。PDFやパワーポイントなどPCで活用していたデジタル資材をすべてタブレットに対応させるとともに、動画などビジュアル化されたコンテンツを追加した。

オフラインでプレゼンが可能

アステラス製薬がタブレット導入に合わせて採用したのが、SCSKのMR向けデジタルプレゼンテーションシステム「MR2GO-DMV」だ。

電波の使えない医療施設内での利用を想定し、あらかじめ営業所で資材をダウンロードした後、オフラインでプレゼンを行うことができる。

病院の待合室などでは、医師との面談のためにMRが列を作って並ぶ光景がしばしば見られる。しかし、最近では訪問規制が強化されており、医師と面談できる機会そのものが減少している。また、1回の面談も数十秒~数分程度と非常に限られた時間しか確保できないことが多い。

「医師との面談の際、いかに濃い提案をするかが業界をあげて求められている」とSCSK・CSKカンパニー産業事業本部流通システム事業部製薬システム課MR2GOブランドマネージャーの佐伯伸純氏は話す。

MRが持ち歩く資材は平均すると約3000種類にも及び、今後も増加する。MR2GO-DMVは、資材の中から説明に使うページを抜粋して保存する「シナリオ機能」、複数の資材をグループ化し、再生の順番を決めて連続再生する「マイキャビネット機能」などを搭載する。「医師の求めに応じて、必要な情報を適時適切に提供したい」(山内氏)とのニーズに応えるシステムとなっている。

さらに、プレゼンの実施実績のログは自動的に蓄積され、管理システムに集約される。MRが使う資材は、医薬の安全性や学問的見地など製薬業界で定められた規則に則った内容となっており、社内の専門部隊が作成している。資材の利用状況を把握し、作成者へフィードバックすることで、より効果的な資材の作成に反映する「クローズドループマーケティング(CLM)」にも寄与する。

「単に情報を再生するビューアー機能だけでなく、製薬業界に特化し、なおかつマーケティングのコンセプトが入っているのはMR2GO-DMVだけ」とSCSK産業システム事業部門産業システム第二事業本部流通システム事業部製薬システム課PMの村上英一氏は言う。

月刊テレコミュニケーション2012年6月号から再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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