「これを使うと、私たちにとって携帯電話がいかに使い難かったかを実感します。写真を撮るのも見るのも、ゲームをするのも楽しい」。老婦人が少し高揚した様子で語る。指し示すのは、サムスン製の「GALAXY Tab」だ。ひとしきり褒めちぎるとまた、傍らでウィジェットに指を当てている“タブレット仲間”に寄り添い、画面を覗き込む。
周囲には、手に手にGALAXY Tabを持つ高齢者が集まる。写真を撮り合い、ピンチ操作で引き伸ばしては見せ合い、その隣では届いたメールを開き、後ろでは初めて使うアイコンをちょっと恐る恐るタップしている。実に楽しそうだ。
ところは東京都北区の一角。総務省の交付金によりNPO法人・EBH推進協議会と王子二丁目町会が実施する「おひとりさま支援プロジェクト『きづな』」が、週1回開催している食事会での一幕だ。
「きづな」プロジェクトでは週1回参加者が集まり、食事やマッサージなど各種の催しを実施。加えて、GALAXY Tabの操作を覚えたり、新しいアプリの情報を得たりする機会にもなっている |
直感的に“いじれる”ユーザーインターフェースを持ったタブレット端末を、世代を超えたコミュニケーションに利用できないか――。そうした発想からスタートした高齢者支援プロジェクト。1月開始3月末終了と期間は短いが、実施主体であるEBH推進協議会・事務局統括の泉博史氏は、GALAXY Tabの操作を楽しむ高齢者を見つめながら、その可能性について語る。
「高齢者には情報機器は使えないと言う人もいるが、それは違う。この方たちはいままで、若者が使う『謎の機械』を歯がゆい思いで見ていた。使い方を聞くことができる仕組みさえあれば、他の世代ともコミュニケーションできる有用なツールになる」
その光景には、高齢者支援という福祉の視点のみならず、超高齢化社会における通信ビジネスの可能性も覗き見ることができる。
EBH推進協議会 事務局統括 泉博史氏 |