<特集>特化型ワイヤレス進化論山岳用LPWAで地方創生 目指すは「IoT圏外ゼロ」

日本は国土の7割以上を山地が占め、いまだに多くのエリアが圏外である。山岳向けに開発されたLPWA「GEO-WAVE」は、こうした山々をエリア化し、IoTによる生産性向上や防災を実現している。

無線通信はますます高速かつ大容量に進化している。理論値最大20Gbps以上の5Gはその代表だ。しかし、高速大容量通信を実現するには、高い周波数帯を使う必要があることから飛距離が犠牲になり、また消費電力も大きくなる。長距離通信を低消費電力で実現するLPWAはこうした方向の真逆に進化している無線と言える。

そんなLPWAでも限界はある。基地局工事などが行われる場所は基本的に人口の多い都内に集中し、人がいない山間部では障害物なども多く、LPWAを使っても電波が届かないことが少なくない。

「5年ほど前に、山の中で電波出力20mWのLPWAを使用したがまったく飛ばなかった」。このように明かすのはフォレストシー 代表取締役の時田義明氏だ。

フォレストシー 代表取締役 時田義明氏
フォレストシー 代表取締役 時田義明氏

フォレストシーは特殊包装資材メーカーであるジオパック(旧共同紙工)の関連会社。「地域のIoT化による地方創生と自然再生」を目指していたジオパックの新規事業部門が2016年にスピンアウトする形で事業をスタートした。時田氏は現在、ジオパックの2代目代表取締役とフォレストシーの代表取締役を兼任している。

ジオパックでは農薬用の包装資材も扱っているため農業とはかかわりが深いが、「特に喫緊の課題が獣害対策だった」と時田氏は言う。

農林水産省によると、鳥獣による令和元年度の農作物被害額は約158億円に上っている。さらに、金額には出ていないが罠を見守る農家や猟師の労働時間も膨大だ。大部分の自治体は1日1回程度、見回るよう努力義務を課しているが、「田んぼならまだしも山の中に罠を仕掛けて、見回りに行くのはかなりの負担。これこそまさにIoTで解決できる課題だと思った。しかし、実際には解決できるものが市場にないことを知り、自分たちでやっていこうと思った」と時田氏は振り返る。

月刊テレコミュニケーション2021年12月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

続きのページは、会員の方のみ閲覧していただけます。

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

FEATURE特集

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。