Ruijie Networks(ルイジエネットワークス、以下Ruijie)は、2000年に中国・福建省で設立されたネットワーク機器ベンダーだ。データセンター(DC)向けスイッチやWi-Fi6製品、5G CPE(宅内通信装置)など多彩なラインナップを揃え、2019年には日本市場にも参入した。
日本国内ではこれまでWi-Fi製品を主軸に展開しており、知名度もまだ低いRuijieだが、グローバルではDCスイッチのシェアをグングン高めている。背景にあるのは、いわゆる“ハイパースケーラー”からの支持だ。
Ruijieのホワイトボックススイッチは中国のアリババグループやテンセント、そしてLinkedIn等のグローバルインターネット企業トップ20社のうち半数以上が採用している。DCスイッチは2018年の中国市場参入後、毎年販売が倍増。2020年第4四半期には中国ネット企業市場で43%シェアと一時トップに立った。成長率では他社を全く寄せ付けていない。ルイジエネットワークスジャパンでODM/OEMビジネス長を務める高橋克己氏によれば、「中国でのホワイトボックススイッチのシェアは80%以上。配車サービス大手の滴滴出行(DiDi)、TikTokのByteDance、チャイナテレコムにも入っている。北米のハイパースケーラーも現在、評価中だ」。
ルイジエネットワークスジャパン ODM/OEMビジネス長の高橋克己氏
アリババやテンセントと二人三脚でSONiC開発ハイパースケーラーがなぜ、同社のスイッチを採用するのか。その理由は、Ruijieが積極的にODMビジネスを展開していることにある。「例えば『このサーバーラックに合うスイッチで、100Gと400Gのポートをいくつ実装するハードを開発してほしい』というリクエストもすべて受け入れる。それが、ハイパースケーラーの成功につながるからだ」(高橋氏)。同社では全従業員の50%以上が開発事業に従事。構成設計から環境構築、機能開発、検証、維持運用、保守に至るまで一気通貫でサービスを提供する体制を有している。
加えて、オープンソースのネットワークOS「SONiC」のサポートも、Ruijie躍進の原動力となっている。
SONiCはマイクロソフトが開発し、その後オープンソース化されたOSで、ハイパースケーラーの多くが自社DCへの展開を進めているところだ。「SONiCコミュニティにも、アリババやテンセントと一緒に出掛けていって開発に貢献している。例えば、彼らが『SONiCでこの機能を使いたい』と言えば、Ruijieのエンジニアがそれに応える。二人三脚でやってきた」(高橋氏)ことが、Ruijieの大きな強みになっているという。
その一方でRuijieは、オープンソースOSを取り扱うだけのエンジニア能力を持たないDC/クラウド事業者のサポートにも力を入れている。同社はホワイトボックススイッチを図表1に示した3つの形態で提供している。
図表1 Ruijieホワイトボックススイッチのビジネスモデル
ハイパースケーラーのように自社で開発能力を持つ企業向けには、前述のように、リクエストに合うハードウェアのみを開発・提供する。
第2は、ホワイトボックススイッチにOSをプラスして提供する形態だ。SONiCのメンテナンス能力はないが、アプリケーションは自ら開発したいというユーザーを対象に、OSの技術サポートを行う。
そして第3が「グレーボックス」である。開発能力はなくともホワイトボックススイッチを利用したいユーザー向けに、ハードウェアとOS、API、ネットワーク構築ソリューションまで「完全な技術サポートも提供する」モデルだと営業本部長の袁文凱氏は語る。
ルイジエネットワークスジャパン 営業本部長の袁文凱氏
取り扱うOSも、SONiC以外にもう1つある。Ruijieが20年にわたる研究開発によって進化させてきた独自OS「RGOS」だ。LinuxベースのネットワークOSであり、「お客様からリクエストを受ければ、使いたい機能を我々で開発する。SONiCを(ユーザー側が)自分たちの責任で使うよりは、我々がRGOSで足りない機能を作るほうが速い」と高橋氏はRGOS活用の利点を話す。
さらに注目なのがコストの低さだ。RGOSのライセンス料はゼロ。ハードウェア保守費の支払のみで、使用している期間中はRGOSのアップデートも行われる。「機能の追加開発は実費用をいただくが、それはあくまで一時費用。出来た機能は、RGOSに標準機能として実装されていく。お客様は『欲しいものだけに対して支払う』ことになるので、コスト感は他ベンダーとは全く異なってくる」(高橋氏)