「世界中でこれだけネットワークでつなぐことが重要になった時代はない。このイベントを開催できた理由の1つも、皆さんが担当されているネットワークにある」
ジュニパーネットワークスはクラウド&サービスプロバイダ向けのオンラインイベント「新たな時代に向けたネットワーク」を6月11日に開催。同社CEOのラミ・ラヒム氏は、ネットワーク越しに参加する通信事業者やクラウド事業者などに向けて、こう語りかけた。
新型コロナウイルスによって世界は未曽有の危機に陥ったが、この危機を克服するために活躍しているのは、医療従事者だけではない。世界各地の都市がロックダウンされるなか、人々の生活や経済活動を支え続けているネットワークもその1つだ。
「私はネットワークに携わることに常に大きな責任を感じてきたが、今ほどそれを強く感じることはない」
同じ思いを抱いているサービスプロバイダの方は多いだろうが、さらに次のようにも感じているかもしれない。「ネットワークの変革を一層加速させなければならない」と――。
ラヒム氏の講演タイトルはイベントタイトルと同じ「新たな時代に向けたネットワーク」。同氏は「私たちは、ネットワークの最重要課題と戦うことにした」と宣言した。
ジュニパーネットワークス CEO ラミ・ラヒム氏。
多くの講演が日本語字幕付きとなっており、絶賛公開中だ
(https://summit.juniper.net/cloud-sp-ja)
「今、Telco業界は再び前進している」ラヒム氏がいう最重要課題とは、ネットワーク管理の複雑さのことだ。ネットワークが発展を続け、社会に欠かせないインフラとなる中で、ネットワーク自体の複雑性も飛躍的に増大してきた。サービスプロバイダのネットワーク管理の複雑さとの戦いは、長きにわたり続いている。
この戦いにおいて近年、重要な節目となったのがSDNである。これにより、ネットワークの効率性は大きく向上した。ジュニパーネットワークスはContrailやNorthStarといった製品で、この変革を牽引した。
そして今、次の変革として進展しているのがネットワークのクラウド化である。クラウド化が起きているのは、SD-WANやクラウド管理型Wi-Fiなどの導入が進むエンタープライズだけではない。サービスプロバイダのネットワークも「クラウドのあらゆるメリットを取り入れようと、ネットワークがクラウドへ向かって進化している」とラヒム氏は話した。
エッジクラウドやクラウドネイティブ、プロビジョニングの自動化などの要素を備えた通信事業者のネットワークインフラは「Telcoクラウド」と呼ばれる。ラヒム氏は、ジュニパーネットワークスのテクノロジーを使って、実際にTelcoクラウドの構築を始めているOrange Business Services(OBS)、BT、Etisalatの3つの大手通信事業者の事例を紹介。
さらに、ジュニパーネットワークスをパートナーに、Telcoクラウドに取り組むドイツテレコムの広報担当副社長であるクリストフ・ヒルズ氏がゲストとして登場し、次のように語った。
「今、Telco業界は再び前進している。クラウド時代の変革が始まったからだ。システム変更に数カ月かかるような状況を、私はもう受け入れない。つまり変えることにした。そして今、満足している。ずっと続いてきた現状を壊すのだ。主導権を取り戻したいと思っており、取り戻すのだ。プロジェクトは順調に進んでいる」
ジュニパーネットワークスをパートナーに、Telcoクラウドの推進に取り組むサービスプロバイダは現在50社にものぼる。すでに数多くのサービスプロバイダが、新たな時代のネットワークに向けて動き出しているのだ。
「次の10年のカギを握るのはエンタープライズ」変革の推進力は、クラウド以外にもある。5GとAIも、サービスプロバイダの未来を変えていく。
ジュニパーネットワークスでサービスプロバイダ製品開発責担当副社長を務めるブレンダン・ギブス氏は「クラウド+5G+AI(人工知能)によってサービスプロバイダのビジネスを変革する」と題して講演した。
トラフィック需要の急増をこれまで牽引してきたのは一般のコンシューマだが、「次の10年のカギを握るのはエンタープライズだ」とギブス氏。ワークロードのクラウド移行、従業員のエクスペリエンスの重視、セキュリティ、まだまだどんな新しいアプリケーションが出てくるのか誰も完全にはわかっていない5Gなどが要因だ。
コンシューマはもちろん、エンタープライズでも急拡大していくトラフィック需要。多くのサービスプロバイダの収益は横ばいなのに、増大し続けるトラフィック需要に応えるため、投資し続けなければならない。5Gへの投資も不可欠だ。
さらにパンデミックも起こる中、「変化するしかないのだ」とギブス氏はオープンソースのアプローチによるクラウドファースト、従量課金制のオンデマンドモデルなどの具体的解決策を示しながら、サービスプロバイダが実行すべきビジネス変革について説明。そのうえで「道のりは同じではない」と強調した。
ジュニパーネットワークスが提案する変革方法は1つではない。サービスプロバイダそれぞれの事情に合わせたソリューションを提供する「ベストパートナーになる」とギブス氏は約束した。
ジュニパーネットワークス サービスプロバイダ製品開発責担当副社長 ブレンダン・ギブス氏
ネットワーク全体にセキュリティを組み込む高まり続けるネットワークの「責任」――。サービスプロバイダがその責任を果たすうえでは、セキュリティも最重要項目の1つとなる。そしてクラウド化の進展は、セキュリティの在り方にも変革を迫っている。
「セキュリティは従来、ファイアウォール、プロキシ、エンドポイントの主に3つで実現されていた。しかしセキュリティは今や、ネットワークの特定の場所に備えるものではなくなった。ネットワークの境界だけではなく、ネットワーク全体に組み込むことが必要だ」
ジュニパーネットワークス セキュリティ製品開発担当副社長のサマンサ・マドリッド氏は、講演「Connected Security:脅威を認識するネットワークの力」で、このように訴えた。
ジュニパーネットワークスは、ネットワーク全体に検知、可視化、防御の機能を拡張するためのソリューションを約1年前から提供している。マドリッド氏はその詳細を解説した後、セキュリティへの投資は「収益源にもなるし、差別化要素にもなる」と述べ、実際に収益力や競争力の向上に結び付けているサービスプロバイダの例を紹介した。
セキュリティへの投資を「コスト」や「法的責任」とだけ見るサービスプロバイダは、まだ少なくないかもしれない。しかし、それは大きな間違いだ。
ジュニパーネットワークス セキュリティ製品開発担当副社長 サマンサ・マドリッド氏
日本語字幕付きの講演が多数!最後に、先のギブス氏が講演の中で、同社の顧客の1社であるマイクロソフトのCEO、サティラ・ナデラ氏の次の言葉を紹介している。この言葉で本レポートを締めくくりたいと思う。
「この2カ月間に2年分のデジタル変革が起きた」
サービスプロバイダも、変革のスピードを緩めるわけにはいかない。
クラウド&サービスプロバイダ向けJuniper Virtual Summitでは、これまで紹介した3つの基調講演のほかにも、サービスプロバイダが変革を加速させるために役立つ多数のセッションが日本語字幕付きで視聴できる。現在はオンデマンドで視聴可能だ。今回見逃した方はオンデマンドでの視聴をおすすめする。
基調講演(日本語字幕)
・新たな時代に向けたネットワーク
・クラウド+ 5G + AI(人工知能)によってサービス プロバイダのビジネスを変革する
・Connected Security:脅威を認識するネットワークの力
・クラウド時代における拡張性と俊敏性に優れたインフラストラクチャを構築する
ブレークアウト セッション(日本語字幕)
・Building Agile Networks for the Unknown
・Automating for Better Service Experience
・Customer Panel: Monetizing the Edge Without Compromising Your Competitive Edge
・MX Routing + Security = Powerful Together
・Win SD-Branch with AI-Driven Enterprise
・Disaggregation – It is Simply Sound Engineering
・Building a 100K Server Fabric
ジュニパーネットワークス主催オンラインイベント
「クラウド&サービスプロバイダ向けJuniper Virtual Summit」
の視聴はこちらから