5Gの商用展開を前に、ミリ波の活用シーンが大きく広がり始めている。30GHz程度以上の極めて周波数の高い電波であるミリ波は、以前は軍事レーダーなど限られた用途でしか使われていなかった。しかし近年、広い帯域幅を確保できることから、無線LAN(WiGig)や5Gなど高速無線通信に使われるようになってきた。
さらに通信以外でも、車載レーダー、高速道路への人の侵入や逆走の検知、建造物などの非破壊検査、空港でのセキュリティチェックなど、ミリ波は様々な分野で活躍している。
ミリ波の回路設計で豊富な実績を持つモバイルテクノの原雅之氏は、ミリ波市場の未来を、次のように説明する。「5Gの登場で、ドローンやカメラ、建機、ロボットなど様々なものにミリ波が搭載されるようになるでしょう。すでに今まで通信と縁がなかった会社からも『28GHz帯の5Gを活用し、新たな市場に参入したい』というご相談を頂いています」
その一方、原氏は、ミリ波の活用領域を拡大するためには、クリアしなければならない課題もあると指摘する。その1つが「回路設計に高度な技術・ノウハウが必要となる」ことだ。
(左から)モバイルテクノ 営業統括部 マネージャー原雅之氏、ワイヤレス事業部 マネージャー 齋藤崇氏
ミリ波のプリント基板の1辺はわずか数ミリ。その中にマイクロメーターの精度で部品を配置する必要がある。高密度に配置された部品間のノイズの影響を排除し、不要共振が生じないようにするには高度な実装技術が不可欠だ。
こうしたミリ波の設計・実装技術を持つ通信機器メーカーや設計会社は、決して多くはない。対応できる会社にしても、個々の技術者のスキル・経験に依拠した従来の手法のままでは、今後大きく拡大するミリ波のニーズに応えられない懸念がある。
そこで解决策として、モバイルテクノが新たに構築したのが「ミリ波設計プラットフォーム」だ。このプラットフォームを活用し、高品質なミリ波モジュールを短期間、ローコストで開発できる体制を整えた。