「働き方改革」で注目高まるテレワーク――成功の鍵は「安全」と「可視化」

「働き方改革」の観点から、オフィス以外の様々な場所で業務を行うテレワークを導入・検討する企業が増えている。成否を分けるのが、モバイルによるセキュアなアクセスと業務の「見える化」だ。

少子高齢化が急速に進む日本。生産年齢人口(15~64歳)は2016年の7600万人から、2050年には5000万人を切ると予想されている。

本格的な労働力減少時代を前に、介護や育児による離職という新たな課題も生まれている。一定の経験を積んだ中高年が、仕事との両立が難しいために離職を余儀なくされることは、企業にとっても大きな痛手だ。

退職者が出た企業では、人材を補充しようとしてもなかなか思うように集まらず、優秀な人材を集めるために賃金を上げざるをえないなど、人材獲得コストが上昇している。また、人手が足りないため仕事の依頼に対応できなかったり、業容の拡大をあきめざるをえないといった事態も生じており、特に中堅中小企業にとって深刻な課題となっている。帝国データバンクによると、人手不足を原因とする倒産件数は2016年以降、増加傾向にあるという。

新しい人材の採用が難しい状況では、現在働いている人の離職を防ぐとともに、効率的な活用が求められる。実際、離職防止や生産性向上といった観点から、働き方を見直す動きが大手企業を中心に急速に進んでいる。

働き方改革には、社内の制度や文化、働く環境、ICT環境などいくつかの側面がある。

いずれも多大な時間やコストを要する中で、比較的取り組みやすいとされるのがICT環境の整備だ。なかでも、柔軟な働き方を実現するテレワークに企業の注目が集まっている。

社会的・技術的背景で普及の兆しテレワークとは、自宅を就業場所とする在宅勤務、オフィス以外の場所で働くサテライトオフィス、移動中の車内や営業先など場所に依存しない働き方であるモバイルワークなどを指す。

1970年代に米ロサンゼルスでエネルギー危機やマイカー通勤による大気汚染の対策として導入されたテレワークは、日本においても1990年代頃から何度となく注目されてきたが、本格的に定着するまでには至らなかった。

それが今回は、先述のような社会的背景に加えて、ネットワークの高速化、モバイル端末やコミュニケーションツールの充実と高性能化、セキュリティの高度化といった技術的背景もあり、広く普及する兆しを見せている。

とはいえ、テレワークの導入は決して容易ではない。

総務省「通信利用動向調査 平成29年調査」によると、テレワークを導入している企業または導入予定の企業は18.2%と、まだ5社に1社の割合にとどまる(図表1)。テレワークを導入しない理由としては「適した仕事がないから」が最も多く73.7%。以下、「情報漏えいが心配」(22.2%)、「業務の進行が難しい」(19.5%)、「導入するメリットがわからない」(14.0%)、「社内のコミュニケーションに支障がある」(12.9%)となっている。

図表1 テレワークの導入状況(企業)
図表1 テレワークの導入状況(企業)

テレワークに関心はあっても、どうすれば成果を挙げられるのか確信が持てず、導入を躊躇している企業が少なくない。また、導入した企業では様々な課題も生まれている。

テレワークを効果的に活用し、導入後の課題を解消するためのソリューションにはどのようなものがあるのか、ここから見ていくことにする。

月刊テレコミュニケーション2018年7月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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