「未来の前触れを敏感にとらえて、現状を変えていこうと努力する人としない人では、全然結果が違ってくるのではないか」
7月19日と20日の2日間にわたり、都内で開催されているソフトバンクのプライベートイベント「SoftBank World 2018」。その初日の基調講演に登壇したソフトバンクグループ 代表取締役会長 兼 社長の孫正義氏は、このように語り始めた。
孫氏が今感じている未来の「前触れ」とは、もちろんAI(人工知能)のことだ。人間の叡智をAIが超えるとき、すなわち「シンギュラリティ」について孫氏は「もう1つのビッグバン。人類最大の革命だと考えている」という。
AIの進化によって、すべての産業が再定義されると語る孫正義氏
世間では、AIによってどんな仕事が代替されるのか、といった議論も話題だが、孫氏はその議論の火付け役となったオックスフォード大学の予測をまとめたスライドを見せながら、「いつ、どんな仕事がAIに追い抜かれるのか。2024年などとそれぞれ書いてあるが、『2年3年の早い・遅い』『本当に抜かれたのか』といったことは、私から言わせれば誤差だ」と述べたうえで、「大事なことは、その方向に向かっており、一度抜かれたら二度と追いつけないことだ」とした。
オックスフォード大学によるAIの進化予測
孫氏によれば、クラウド側のGPUのワンチップ当たりの処理能力は、2030年には現在の200倍になる。また、ソフトバンクが買収したアーム社のチップにはAI機能が搭載され、2030年には1兆個がありとあらゆる場所にばらまかれる。すでに顔認識や医療診断などの領域で人間を上回る精度やスピードを発揮しているAIだが、今後さらに「AIは恐ろしい勢いで、二次曲線で進化していく」。
すでに一般的な医師を上回り始めたAI
その結果として、「すべての産業が再定義される」というのが孫氏の見方であり、「AIを制するものが未来を制する」という。
そして、「1日でも早くAIに取り組んだものが勝つと分かっているのに、なぜ全力でAIに取り組まないのか。それは自分の仕事をまだ真剣にやっていないということだ」と聴衆を挑発。ライドシェアなどを規制する日本政府についても、「まさに未来を否定している」と批判した。