従業員の働き方を見直す動きが、企業において新しい段階を迎えている。
安倍政権が発足以来、“最大のチャレンジ”と位置付けて「働き方改革」を推進している中で、企業も手探り状態ながらスマートデバイスの導入や「Microsoft Office 365」などのクラウドサービスの活用といった方法で働き方の見直しを図ってきた。
しかし今年3月、政府がまとめた「働き方改革実行計画」に残業時間を年間720時間、繁忙期でひと月あたり100時間までとする上限規制が盛り込まれたことで、多くの企業が残業時間の削減という積年の課題に取り組み始めている。
日本企業では終身雇用や年功序列などを背景に、「長時間労働イコール会社に貢献している」といった長時間残業を推奨する文化が根強い。
だが、電通社員の過労死問題の影響もあり、国を挙げて長時間労働を是正する方向へと舵を切ったことで、多くの企業が長時間の残業を禁止したり、定時に従業員を退社させるようになっている。
とはいえ、仕事の量や従業員の人数は変わらないままで残業時間を減らしたのでは、様々な弊害が生じることは避けられない。ロイターが資本金10億円以上の企業400社を対象に今年4月に行った調査によると、「残業時間の上限規制が適用された場合、現状の体制では事業に支障が出る」と回答した企業は製造業が35%、非製造業が46%だった。残業時間が減少すればその分だけ従業員を増やさなければならないが、人手不足に悩む業種では人材の確保が難しいことが一因としてある。こうした事態を受けて、「早期に生産性向上への対応を検討する」と回答した企業は、製造業・非製造業とも67%に上った。
たとえ残業規制の問題がなかったとしても、生産性向上は企業にとって重要なテーマだ。人手不足が深刻化しているからだ。日本の労働人口は少子高齢化の進展によって減少が進み、2010年の8000万人から30年には6700万人と1300万人も減少するとの予測もある。
残業時間の削減や生産性の向上をより有効なものとするためには、企業の制度や文化を見直すことはもちろんだが、ICTの利活用も不可欠だ。それではどのようなソリューションがあるのか、具体的な成果も交えながら紹介する。