LPWA(Low Power Wide Area)ネットワークの提供を開始する企業や、LPWAを活用したIoTサービスの実証実験を行う企業が、今年に入ってから続々と登場している。
ここでいうLPWAとは、具体的には「SIGFOX」と「LoRaWAN」のことだ。
どちらも、1つの基地局(ゲートウェイ)を建てるだけで、数km単位の広域エリアで無線通信できるようになる。また、基地局と通信するエンドデバイスに組み込む通信モジュールは、省電力化・低コスト化が図られている。膨大な数のデバイスを、安いコストでインターネットに繋げられるようになるとあって、IoT時代を迎えた今、大注目のネットワークなのだ。
では早速、SIGFOXとLoRaWANの現状を確認しよう。
SIGFOXの魅力はサービス料金&手軽さまずSIGFOXについては、日本で独占展開する京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が、2017年2月27日から東京都内でネットワークのサービス提供を開始。サービスが始まったばかりということもあり、ロケーションによって電波強度の濃淡はあるようだが、3月末には東京23区、川崎市、横浜市、大阪市のほぼ全域でSIGFOXが利用可能になった。
SIGFOXのサービスでは、単にネットワーク環境が提供されるだけではない。ネットワークに加えて、データを一次蓄積するSIGFOXクラウドまでが一気通貫で提供される(図表1)。自社内あるいは顧客向けのIoTサービスを開発する際、ネットワークやデータ保管場所などのインフラ構築に煩わされることなく、IoTサービスの開発に集中できる。
図表1 SIGFOXのサービスイメージ図
「SIGFOXパートナーは現在、90社を超えた」。こう明かすのは、KCCS LPWAソリューション部 責任者の大木浩氏だ。SIGFOXパートナーとは、KCCSが提供するSIGFOXネットワークを利用できるIoTデバイスやIoTサービスを開発する企業のことだ。
SIGFOXの使い勝手についてパートナーからは、「『自らネットワーク環境を構築する必要がないのが魅力』『基地局の運用管理が不要でよい』などの反応が寄せられている」と、KCCS LPWAソリューション部 副責任者の日比学氏は語る。
また、すでにSIGFOXをユーザーとして試用し始めてもいるアズビル金門の執行役員 経営企画部部長で、IoT事業推進担当の奥野啓道氏は次のようにコメントする。
「SIGFOXクラウドに蓄積されたデータを取り出すためのAPIは、とても充実している。非常に使い易い」
水道・ガスメーター大手であるアズビル金門はSIGFOXパートナーとして、SIGFOXによる遠隔検針サービスの検証を行っている。
そんなSIGFOXに立ちはだかっている最大の壁は、全国規模で見ると、まだ限られた地域でしかSIGFOXを使えないことだ。大木氏は、「SIGFOXパートナーから最も要望があるのはカバレッジ拡大」と述べたうえで、「これからパートナーのニーズや需要、計画に基づいて、しっかりとSIGFOXエリアを広げていく。2020年3月末には、全国で人口カバー率99%を実現したい」と展望を語る(図表2)。
図表2 SIGFOXの国内エリア展開状況と計画
そんな課題を抱えつつも、すでに2社、宅配ピザチェーン「ナポリの窯」を全国展開するストロベリーコーンズと各種センサーを製造・販売するオプテックスが、SIGFOXを活用するIoTサービスを正式稼働させている。ストロベリーコーンズは、ナポリの窯の店舗にある冷蔵庫の温度管理にSIGFOXを活用しているが、まずはSIGFOXが開始した都内店舗から利用し始め、エリア拡大に合わせて順次、他の店舗にも導入していく計画だという。